コラム

自分の死後ペットはどうなる?終生飼育施設とペット信託

この記事は2017年3月3日の記事を再編集しました。

医療技術の発展はもちろん、飼育環境やペットフードの改良等により、ひと昔前と比べるとペットの寿命は飛躍的に伸びています。これは喜ばしいことですが、飼い主さん自身が高齢だった場合、「もし自分が死んでしまったらペットはどうなってしまうのだろう?」と不安を抱いている飼い主さんは多いことでしょう。

万が一に備えて、今回は、様々な選択肢と「老犬・老猫ホーム」や「ペット信託」についてまとめてみました。

自分の死後ペットはどうなる?終生飼育施設とペット信託

自分の死後、ペットはどうなる?

ペットに対しても高齢化という言葉が使われるようになり、飼い主さん自身の寿命よりも長く生きるペットが増えてきています。

他に同居家族がいれば、自分が死んでしまっても、飼育は継続されるため心配がありませんが、高齢者のみの家庭や一人暮らし、他の家族に託すことが心配…等々、様々な理由から今後のことを思い悩んでいる飼い主さんは少なくないでしょう。

飼い主さんに何かあった場合に考えられるペットのその後について以下にピックアップしてみます。

  1. 他の家族や親族、友人、知人に引き取ってもらう
  2. 終生飼育をしてくれる施設と契約し、自分の死後、引き取ってもらう
  3. ボランティア団体等、保護ペットとして引き取られる
  4. 保健所や動物保護センターへ引き取られる(殺処分対象)
  5. ペット信託の手続きをし、財産と共にペットの飼育を委ねる

殺処分対象のペットこのように、自分が生きている間にペットの将来を考えておかなければ、最悪保健所等に引き取られ悲しい結末を迎えることも十分にあり得ることが分かります。
信頼のおける家族や友人、知人がいる場合は、その相手にペットの飼育を頼むことも出来るでしょう。また、動物保護団体へ相談することも有効だと思います。

しかし、高齢となったペットを引き取ってもらうことは、容易な事ではありません。健康体であればいいのですが、高齢ペットは人間と同様に、何らかの病気や認知症等になっていることも考えられるからです。

誰かにお世話になる以外の方法として、有力な選択肢は「終生飼育の施設」と「ペット信託」になります。

終生飼育の施設とは?

ペットを終生飼育してくれる施設は大きく分けると2つあります。
寄付やボランティアを軸とし、NPO法人や民間の団体が運営している「アニマルシェルター」と民間が運営している「老犬・老猫ホーム」と呼ばれる施設です。

アニマルシェルター

アニマルシェルターは、基本的に殺処分されそうになっている動物や保護された動物の里親を見つける活動をしつつ、里親を見つけることが難しい動物については終生飼育をしていくというスタンスを取っています。

そのため、現在飼育しているペットのことを依頼することは難しい場合もありますが、状況次第では受け入れてくれることもあるので、一度相談してみることをおすすめします。

老犬・老猫ホーム

老犬・老猫ホームは、終生飼育に必要と想定される金額を支払ってペットを預ける施設です。契約を済ましてさえおけば、その後のことを心配する必要は基本的にありません。
また、ほとんどの場合、飼い主が健全でも事情があって飼育が難しくなった時に、一時預かりや終生預かりをしてくれるというメリットがあります。

気になる費用面ですが、終生飼育の場合、平均して100万円以上の費用が必要となり、高額となります。この費用には、入所金・施設利用料・食費・介護費・雑費が含まれています。懸念点としては、倒産等によって施設そのものが閉鎖されてしまう可能性が考えられます。

ある施設の事例(小型犬の場合)

入所金30万円、生活費は平均寿命までの残り年数1年につき、15万円という計算をしています。
例えば、小型犬が10歳の場合で平均寿命が13歳の場合だと「入所金30万円+平均寿命までの3年×15万円」の合計75万円が必要となります。
しかし、この費用の中には医療費が含まれていないため、将来病気になったとしても、特別な治療はせずに過ごすことになります。

どちらに預けるとしても、施設に万が一が起こる可能性を踏まえながら、納得がいくまで話を聞き、検討することが大切です。また、施設によってはペットの生活環境に雲泥の差があるのが現実です。必ず複数回訪問をし、環境や施設のスタッフの様子等を確認しましょう。

ペット信託とは?

ペット信託(FA信託)とは、ペットを残したまま飼い主さんが亡くなってしまった時に、事前に指名した相手によって終生飼育を行ってもらうための方法です。

日本では「財産」は人間に対して残すことが法的な前提とされています。団体や自治体へ寄付することも可能となっておりますが、「ペット」に対しては相続させることができません
そのため、ペット信託という方法で、飼い主さんが亡くなった後も安心してペットが生活できる環境を守るための取り組みが始まりました。

ペット信託の実施方法

犬の葬式ペット信託は、2013年に商標登録されたばかりの比較的新しい仕組みです。これは「飼い主が亡くなった後でもペットの生活を保障したい」という多くの飼い主たちの想いによって誕生しました。

海外では「億単位の遺産をペットに残した」という話もあるほど、昔からある方法なのですが、日本ではまだ試行錯誤の最中であるのが現状です。

ペット信託の手続き

ペット信託は、信託法に基づいて手続きが行われます。「金銭・土地等の財産」と同様に飼い主を代表とした管理会社を設立し、個人が所有していた財産を会社へ移します。そうすることによって、相続財産と切り離すことができ、会社という形でペットに残しておきたいお金を確実に指名した相手に渡すことが出来ます。

ペット信託を利用するにあたり、生前に飼い主さんが行う手続きは以下となります。

  1. ペット信託のための会社を設立
  2. 財産を設立した会社へ移動させる
  3. 正式な遺言書を作成
  4. 遺言書の実行人を手配する
  5. 相続の手続きを行う
  6. ペットの引き取り先、世話人を見つける

一連の手続きを見ただけでも、それなりの手間がかかることは否めません。中でも一番飼い主さんが気に掛ける必要があるのは、「ペットの飼育環境」です。誰に世話を任せるのか、どこで飼育するのか、終生飼育なのか、飼育費用の見積もりはどのくらいになるのか…等考えることでしょう。

今はまだ新しい取り組みということもあり、ペットの引き取り先を親族の中から選び、飼育費用を定期的に会社から支出する流れが一般的です。

ペットのために残す費用は、毎日の食事や身の回りの物を購入する費用だけでなく、飼い主さんが家を留守にする際に利用するペットホテルやトリミング等の費用、病気になった時の医療費や介護費等も考慮して決めなければなりません。

飼い主さんが亡くなった時に、予め作成していた書類の内容に基づいて、新しい飼い主さんへペットと財産が渡されます。財産については先述した通り、一括ではなく定期的に支出するのが特徴的です。

ペット信託に似ている負担付遺贈とは?

ペット信託と似ている財産遺贈(贈与)に、遺言の「負担付遺贈(贈与)」という方法があります。これは、遺産を受け取る代わりに「ペットの終生飼育」等の条件をつけたものとなります。

しかし、一応は法的拘束力があるとはいえ、ペットが適正飼育されているかどうかをチェックされることがほとんどないので、実は飼育されずに遺産だけが渡ってしまうことがあり得るのです。

その点、ペット信託では「遺言執行者」をたてるため、きちんと適正飼育されているかどうか、財産がペットのために使用されているのかどうか等、チェックをしてもらうことが出来るため安心です。
また、自分の遺産から費用が捻出されますので、事前に高額となる終生飼育費用を用意する必要がないこともメリットとなります。

ペット信託の気になる費用

では、実際にペット信託を実施しようと思った時に、一番気になるのは「費用」ではないでしょうか?以下費用について見てみましょう。

専門の管理会社を設立、契約書、遺言書、会社設立、会社運営の諸手続きに15~30万円かかります。行政書士等の専門家へ依頼を行った上で、手続きを進めるので費用にバラつきがあります。その後は会社運営に月々1~4万円程かかります。

飼い主さんが死亡した後は、ペットの食費、消耗品費用、医療費、トリミングやペットホテル等のサービス利用費、飼育手間代(人件費)飼育設備代等、月々3~5万円程の費用が発生します。

この費用はペットの残された寿命から計算し、十分な飼育費用を確保しておく必要があります。
例えば、5歳の小型犬を残して飼い主さんが亡くなってしまった場合、平均寿命まで8年ありますので、「8年×月々10万円×12ヵ月」合計960万円が必要となります。また、8年間の会社運営費(月々4万円計算)として、384万円が別途必要となります。

想定して考えておかなければならないこと

万が一飼育途中で予算が尽きてしまった場合、どのように費用を工面するのか、予め決めておく必要もあります。
また、会社設立の行政書士や会社運営の担当者、財産管理人、将来ペットを引き受けてくれる相手は異なりますので、それぞれの役割分担も決めておかなければなりません。

さらに、ペットが亡くなった時や資金が底をついてしまった場合に会社をたたむ手続きも必要となるので、これらの処理を依頼する相手を事前に決めておく必要があります。

おわりに

こう見てみると、ペット信託を選択することはなかなかハードルが高いように感じます。ペット信託を行う上では、十分な期間や専門家の協力、そして何よりペットが安心して生活できる環境と十分な資金が必要となります。

「自分が死んでしまった場合、最愛のペットはそうなってしまうのだろうか」という不安は、飼い主さんであれば誰もが抱いていることでしょう。しかし今では、ペットや飼い主さん自身の高齢化によって、様々なサービスが誕生してきています。

老犬・老猫ホーム等は、まだまだ発展途上と言えますが、こういったサービスがあることで高齢者でも新たにペットを迎えられることが可能になっていることは事実です。

ペットの将来をどうしていくのか、まずは飼い主さん自身が納得できるまで相談や見学を行い、最良と思えるものに契約することがいいでしょう。もちろん、ペット信託を選ぶ場合には、ペット信託に詳しいNPO法人や行政書士事務所や法律事務所へ相談する事もできます。

また、現実的にペット信託や老犬・老猫ホームの利用が難しいという場合には、もしもの時に備えて、親族や知人に依頼してみたり、引き受け可能な動物保護団体のリスト作成や、将来の飼育費用に充てられるように、ペット用の貯金をしておくという方法もあります。

今では自分自身のお葬式やその後の事を考える「終活」が広まってきていますが、ペットの将来のことも終活の大切な一つとして考えることで、ペットの生活を守っていくことに繋がります。

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