コラム

自分の死後ペットはどうなる?終生飼育施設とペット信託

医療の発展や飼育環境・フードの改良などにより、ペットの寿命は飛躍的に延びました。喜ばしいことではありますが、「もし自分が死んだらペットはどうなってしまうのだろう?」と不安に思う飼い主さんも多いことと思います。

そこで、今回は様々な選択肢と「老犬・老猫ホーム」や「ペット信託」についてのお話です。

自分の死後ペットはどうなる?終生飼育施設とペット信託

自分の死後、ペットはどうなる?

高齢化という言葉がペットの間でも言われるようになった現在、飼い主さんの寿命よりも長い余命を持ったペットの数も増えてきました。

もし、自分が死んでも他に家族がいて、飼育を引き継いでもらうことができるなら心配はいりませんが、高齢者のみのご家庭、一人で飼っている、他の家族に託すのは心配…など、様々な理由で悩んでいる飼い主さんも多いのではないでしょうか。

飼い主さんに万が一があった時、考えられるペットの行く末について、以下箇条書きにしてみました。

  1. 他の家族や親族、友人、知人に引き取ってもらう
  2. 終生飼育をしてくれる施設と契約をしておき、自分の死後、引き取ってもらう
  3. ボランティア団体等の保護ペットとして引き取られる
  4. 保健所や動物保護センターに引き取られる(殺処分対象です)
  5. ペット信託の手続きをし、財産とともにペットの飼育を委ねる

以上を見たとき、自分が生きている間にペットの行く末をきちんと考えておかないと、保健所などに引き取られるという、ショックな結果になることも十分にあり得ることが分かります。

信頼のおける家族や友人、知人がいる場合は、その人にペットのことを頼むこともできるでしょう。また、動物保護団体に増段することも有効だと思います。しかし、高齢化したペットを引き取ってもらうことは、想像するより簡単なことではありません。
健康体であれば良いですが、高齢化の進んだペットは人間同様、認知症などの病気になっていることも考えられます。

そうなった場合、ペットの将来を考えた時に有力な選択肢として残るのは、「終生飼育の施設」と「ペット信託」です。

終生飼育の施設とは?

ペットの将来を考えたとき、選択肢の一つとして挙がる「ペットを終生飼育してくれる施設」は、大きく分けて2つあります。
1つは、寄付やボランティアさんを軸に、NPO法人や民間の団体などが運営している「アニマルシェルター」、2つ目は民間が運営している「老犬ホーム/老猫ホーム」と呼ばれる施設です。

アニマルシェルター

アニマルシェルターは、基本的には殺処分されそうになったペットや、保護したペットの里親を見つける活動をしながら、里親を見つけることが困難なペットについては終生飼育をする、というスタンスです。
このことから、今現在飼っているペットのことを頼むということは難しいと言えます。ただし、状況によっては受け入れてくれることもあるので、一度相談をしてみると良いでしょう。

老犬・老猫ホーム

老犬・老猫ホームは、終生飼育に相当する金額を支払った上で預ける施設になります。契約を済ませれば、その後を心配することは基本的にありません。また、ほとんどの場合、飼い主が健在でも事情があり飼い続けることができなくなった際、一時預かりや終生預かりをしてくれることがメリットでもあります。

しかし、問題もあります。まず、平均して100万円以上(終生飼育の場合)と、料金が高額になることです。これには「入所金」+「施設利用料」+「食費」+「介護費」+「治療費」+「雑費」等が含まれます。
また、倒産などによって施設そのものが閉鎖されてしまう可能性があることです。

ある施設で小型犬の場合

入所金30万円と生活費は平均寿命までの残り年数一年につき、15万円という計算をしています。
たとえば、10歳の小型犬の場合、入所金30万円+平均寿命まで3年×15万円の合計で75万円が必要となります。この費用には医療費が含まれていないので、将来病気を発症しても、特別な治療はせずに過ごすということになるでしょう。

どちらに預けることになる場合にも、施設に起こり得る万が一に備えて、納得がいくまでよく話を聞き、検討する必要があります。また、施設によってはペットの置かれる環境にも雲泥の差があるのが現実です。必ず複数回の訪問等をし、環境や施設のスタッフなどの様子を確認することも大切です。

ペット信託とは?

ペット信託(FA信託)は、飼い主にもしものことがあり、ペットを残したまま亡くなってしまった場合に、事前に指名した相手によって引き続き終生飼育してもらうための方法です。

日本では、法的に「財産」は人間に残すことが前提とされています。もしくは、団体や自治体への寄付も可能ですが、「ペット」に相続をさせることができません。そのため、ペット信託という方法で、飼い主が亡くなった後も、大切なペットが安心して生活できる環境を守る取り組みが始まりました。

ペット信託の実施方法

犬の葬式
ペット信託という言葉は、2013年に商標登録されたばかりの新しい仕組みです。「飼い主が亡くなった後のペットの生活を保障したい」という多くの飼い主の想いから生まれました。海外では、ペットに億単位の財産を残したという話題もあるほどに、古くからある方法ですが、日本ではまだ試行錯誤の最中なのが現状です。

ペット信託の手続き

日本では、法整備も追いついていないので、「金銭、土地等の財産」と同じように、専門の管理会社を設立し、財産の管理をし、その財産を「ペット」のために使うという手順になります。

ペット信託実施にあたり、飼い主が生前に行う手続きは以下です。

  1. ペット信託のための会社を設立
  2. 財産を設立した会社へ移動させる
  3. 正式な遺言書を作成
  4. 遺言書の実行人を手配する
  5. 相続の手続きを行う
  6. ペットの引き取り先、世話人を見つける

手続きを見るだけでも手間がかかるのが分かります。中でも、一番気に掛ける必要がある点は、ペットの飼育環境です。誰に世話を任せるのか、どこで飼育するのか、終生飼育なのか、飼育費用の見込みはどの程度か…。
現在は、まだ始まったばかりの仕組みということもあり、ペットの引き取り先を親族から選び、飼育費用を定期的に会社から支出するという流れが一般的です。

ペットのために残す費用は、食事や身の回りの物の購入費だけでなく、飼い主が家を留守にする場合のペットホテル代や、トリミングなどの美容代、医療費や将来の介護費用なども考慮して決めることになります。

自分が亡くなった時には、予め作成している書類の内容に沿い、新しい飼い主にペットと財産が渡されます。財産に関しては、先に記述の通り、一括ではなく定期的に支出するのが特徴的です。

ペット信託に似ている負担付遺贈とは?

ペット信託に似た財産遺贈(贈与)に、遺言の「負担付遺贈(贈与)」というものがあります。これは遺産を受け取る代わりに、「ペットの終生飼育をすること」等の条件を付ける方法です。

しかし、一応法的拘束力があるとはいえ、ペットが適正に飼育されているのかをチェックされることがほとんどないため、実際には飼われずに遺産だけが渡ってしまうこともあり得るのです。

その点、ペット信託では「遺言執行者」という、きちんと世話がされているか、財産がペットのために使われているか等のチェックをする人を決めることができるので安心です。
また、自分の遺産で費用が捻出されるので、生きているうちに高額になる終生飼育のための費用を用意する必要がないこともメリットです。

ペット信託の気になる費用

ペット信託を実際に行う上で、一番気になるのは、その「費用」です。

まず専門の管理会社を作ります。そして契約書、遺言書、会社設立、会社運営の諸手続きに15~30万円がかかります。行政書士などの専門家へ依頼し、手続きを進めるので費用はまちまちです。その後、会社の運営には月々1~4万円程かかります。

実際に飼い主が死亡した後は、ペットの食費、医療費、消耗品費用、トリミングやペットホテルなどのサービス利用費、飼育手間代(人件費)、飼育施設代などにかかる費用は、月々5~10万円程です。

この費用は残されたペットの寿命から計算し、十分な飼育費用を確保する必要があります。もし、小型犬が5歳の時に飼い主が亡くなってしまった場合は、

平均寿命までの8年間×月々10万円×12ヵ月の合計960万円が必要となり、会社を8年間運営する費用として(月々4万円計算)、384万円が別途必要になります。

想定して考えておかなければならないこと

万が一、飼育途中で予算が尽きてしまった場合、どのように費用を工面するのかを事前に決めておかなければなりません。

そして会社設立の行政書士や会社の運営担当者、財産管理人と実際にペットの世話をする相手は異なるでしょう。それぞれの役割分担も事前に決めておかなければなりません。

さらに、ペットが亡くなった時、資金が底をついたときには会社をたたむ手続きも必要となります。これらの処理も事前に依頼できる相手を決めておかなければなりません。

おわりに

このように見てみると、まず安易に「ペット信託」という方法を考えてはいけないことが分かります。実行するためには、十分な期間や専門家の協力、そしてペットが安心して生活できる環境と資金が必要となります。

「自分が死んだら、最愛のペットはどうなってしまうのだろう…」という不安は、誰にでもあるものです。けれど、ペットの高齢化や飼い主さんにも高齢者が増えてきたことによって、様々なサービスも生まれてきています。

老犬・老猫ホームなどもまだ進化の途中と言えますが、これらがあることで高齢者が新たにペットを迎えるという選択も可能になったのは事実で、とても喜ばしいことだと思います。

どのような選択肢を選ぶにしても、まずは複数個所に相談、見学をし、自分自身が納得した上で契約を結ぶことが大切です。ペット信託を選ぶ場合は、ペット信託に詳しいNPO法人や、法律事務所もあるので相談ができます。

また、ペット信託や老犬・老猫ホームの利用が現実的でない場合は、万が一に備えて、親族や知人に依頼をしたり、引き取り可能な動物保護団体のリストを作成や、当面の飼育費用を充当できるようにペットのための貯金をしておくという方法もあります。

自分のお葬式やその後のことを考える「終活」が話題となっていますが、ペットのことも終活の一つとして考えることで、ペットとの暮らしを安心なものにしていけるかと思います。

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