ペットロスに伴う病的症状と克服法
この記事は2017年4月14日の記事を再編集しました。
家族同然、そして最良のパートナーとして長い年月共に生活してきたペットが亡くなってしまった時、飼い主は想像以上の喪失感に襲われ、生活の全てが色彩を失ってしまったかのように感じることでしょう。
しかし、この悲しみ辛さがなかなか他人には分かってもらえないことがあります。ペットロスを経験した飼い主は人の死と同質の悲しみを感じているにも関わらず、周囲の目を意識するあまり、悲しむに悲しめないという実情があります。
こういったペットロスに直面した際、どのようなことが起こり、どのように克服していくべきかご紹介します。
1 ペットロスとは
2 ペットロス症候群とは
3 ペットロスをどのように感じる?
4 家族全員に症状が出るのか
5 ペットロスの予防法
6 ペットロスを克服する為にはどうしたらいいか
7 ペットロス、新たな課題
ペットロスとは
ペットロスという言葉は1970年代半ば、ペットとの死別問題に関心を持った専門家の一部が集まり、開かれた会合に出席した人達によって「loss of pet(ペットの喪失)」と初めて使われたと言われています。
「ペットロス」という言葉は、病名の一種と認識している人も多いと思います。しかし、日本ペットロス協会の定義では、以下のようになっています。
【愛するペット、動物を失うことと、その別れに伴う心理的、身体的、社会的、スピリチュアル(霊的)な体験過程に対する総称的な用語】
つまり、ペットとの別れが原因となった喪失体験に対する包括的な総称となっています。
しかし、このペットロスを経験した人の中には、生活に支障が出るほど病的な症状を発症するケースがあり、その際の診断名は「ペットロス症候群」と言われています。
ペットロス症候群とは
ペットロス症候群とは、飼い主がペットと死別したことが引き金となり、激しく悲嘆し、病的な症状が現れることを言います。よく見られる症状は以下です。
- 精神的にひどく落ち込む
- 何もやる気が出ない
- 他人との交流を拒む
- 食欲が減退する
- 不眠や食欲の不振
- 自分自身を責める(自責の念)
このような症状がみられ、病院を受診すると抗不安薬や睡眠導入剤等が処方されることがあります。
ペットを飼っていた人であれば、ペットロスは誰でも経験することですし、正常な反応であるため、薬物治療やカウンセリングを受ける必要はなく、自然と回復することができるので、この場合はペットロス症候群とは診断されません。
ペットロス症候群とは、すでに自助努力では自己回復をすることが困難な病的水準に達した場合のことを指すのです。
ペットロスをどのように感じる?
ペットロスは、ペットを病気や事故、老衰等で亡くした瞬間から飼い主自身の生活が一変してしまうことから発生します。
犬を飼っているケースを例に挙げてみましょう。
犬の平均寿命は現在10~15歳と言われています。ペットショップで子犬で購入した場合、迎え入れたその日から10年以上、毎日決まった時間に餌を与え、散歩に出かけ、世話をする日々が続きます。寛いでいる時は、自然と触れ合い、抱き上げ、その存在を感じています。
しかし、愛犬が亡くなってしまうと、当たり前に続けてきた生活が一変します。散歩を毎日行く必要がなくなり、散歩に使っていた時間がぽっかりと空き時間になってしまいます。犬の散歩が飼い主の運動習慣になっていた場合には、数日で運動不足を実感することになるでしょう。
さらに、家族の会話の中心でもあった犬の話題も次第と減り、無意識のうちに感じていた愛犬からの「癒し」が消えてしまうのです。愛犬のかわいい寝顔を見た時や、ふとした時に思わずカメラを向けてしまうこともなくなってしまいます。
このように、10年以上続いた生活が変化し、飼い主に現実として愛犬の死を突き付けられることによって、ペットロスを感じるようになるのです。
家族全員に症状が出るのか
ペットロスは程度の差はありますが、「ペット」に関わったすべての人に起こります。犬を飼っていた場合を例にあげて見てみましょう。
- 共に生活をしていた家族
- 家族の中でも中心的になって世話をしていた人
- 毎日の散歩でいつも顔を合わせていた隣人
- 末期の治療に携わっていた獣医師
- 毎月利用していたペットショップのトリマー
このように、その犬に関わった人たちが喪失感を感じます。
中でも、家族は特に大きな精神的ダメージを受けます。家族の中でも犬との接する頻度やお世話の分担によって、その程度が変わるでしょう。
ペットロスは、その程度が他人からは見えないため理解をすることが難しいことがあります。小さい子どもであれば、親の前でその悲しみがいえるまで泣きはらすこともでき、次第に心が落ち着きを取り戻していきます。しかし、大人の場合はペットロスが重篤であっても、こんな悲しく思ったり、泣き崩れるところを他人が見たらおかしいと思われるのではないかという自尊心が働き、人まで泣くことをせず、心の奥底にしまい込んでしまい、結果的に周りからは理解しがたくなってしまうのです。
人前で泣くことやペットの写真を肌身離さずに持つことだけがペットロスではありません。行動や態度、言葉に出さなくても苦しみを抱えている場合があるということを周囲も理解することが大切です。
ペットロスの予防法
ペットロスで一番つらいのは自責の念です。どうしてこうなってしまったのかという感情が沸き上がります。これは、生殺与奪が飼い主によるものが大きい為です。
自責の念を軽減させるための方法の一つとして、例えば病気になってしまった場合、人間の子どもと同様に悔いのないように納得いく医療治療を施すようにしましょう。できることを最大限にやったという思いが自責の念の軽減につながります。
ペットロスを克服する為にはどうしたらいいか
ペットロスを克服するためには「グリーフワーク」という、自然と湧き上がる感情と向き合う作業を行うことが大切です。もし愛するペットを失ったとき、以下の4つの過程を踏んでみましょう。
- 死別の事実を受け入れる
- 悲嘆の気持ちと向き合う
- ペットのいない環境に適応するために、新たなライフスタイルを作る
- 亡くなったペットの居場所を心の中に作る
家族や周囲の協力はもちろん重要になります。悲しむことは当然であるということを理解することが大切で、出来る限り思いやりを示すようにしましょう。
ひたすら話を聞き、共感する。否認したり、新しいペットを飼ってみたらということは傷つけてしまうことがあるので、絶対に言わないようにしましょう。
ペットロスを克服するためには、今までのペットとの生活の全てを突然切り離すことなく、時間をかけて、無理せずゆっくりとたどっていきましょう。そうすることでペットを思い出すときに、最後の悲しい瞬間や喪失感ではなく、ペットのかわいい姿や楽しかった時間を思い浮かべることができるようになります。
ペットの愛くるしい姿や、やんちゃな様子を笑いながら話すことができるようになったとき、ペットロスから立ち直ることができたということになります。
ペットロス、新たな課題
災害によってペットを亡くしてしまうことがあります。家族を失った人もいる中で、ペットが亡くなったということを言ったり悲しむことを、場違いのように思ってしまったり、ペットの死を悲しむに悲しめないことが問題となっています。
災害に遭うだけでも、とてもつらい心労であるのにも関わらず、それに加えて人に気を遣いペットとの別れを内にしまい込んでしまうのです。
災害時にはこういったペットを失った人に対するメンタルケアも、今後忘れずに取り組んでもらえる体制を整える必要があります。
ペットの死は人間と同等の悲しみがあります。災害という、普段の生活がままならない中で、そのやりきれない思いを周囲に打ち明けられることができない辛さ。
社会的にペットロスを甘くとらえない風潮になることで、ペットロス症候群に至る人を1人でも減らすことに繋がっていきます。
空前のペットブームの後には、多くのペットロスが待ち受けていることを、一度真剣に考えてみると良いのではないでしょうか?