コラム

第81話 パンジー公園の新入り親子の切ない話 その5 3匹目 フワフワの最後の気遣い

里親として龍馬と凜子を迎えたところから始まった私の猫ライフ(第1話第2話第3話)。その数年後に自分の不注意で龍馬を脱走させてしまい(第5話から第26話)、その捜索中に出会った沢山の野良猫の避妊去勢手術に関わったことで、猫ボランティアを予定外に始めることになる。最初のきっかけは、2013年11月に、猫道と呼ばれる場所にて偶然猫の大群を見かけ(第26話)、人馴れした子猫の保護譲渡や、保護できない猫の不妊去勢手術をしたことだった(第28話から第35話)。その後もその猫道と、パンジー公園で餌やりをしているシマコさん(第26話)からの依頼があれば捕獲、手術を手伝っていた(第36話から第78話)。

2014年の秋、シマコさんからの相談で、子猫3匹をTNR(捕獲、不妊去勢手術して元の場所に戻すこと)をした(第77話)ところ、そのうち2匹はその半年後にひき逃げ事故で亡くなり(第78話)、それから約1年後の2016年初頭、兄弟のうち1匹残ったフワフワもひき逃げ事故に遭い、骨盤骨折をして歩けなくなった模様(第79話)。事故現場に居合わせたシマコさんが病院に運んだが、自分にはどうしてやることもできないので、病院で安楽死の相談をしたようだった。フワフワは下半身は動かなくても意識ははっきりしており、必死で威嚇してくるので、病院もとても安楽死はできないので、ひとまず預かることにしたとのことだった。

私がシマコさんからその話を聞いたのは翌日だった。すぐ病院に猫の状態を確認すると、フワフワは内臓は大丈夫そうだが、骨盤骨折しており、手術をしても歩けるようになるかどうかはわからない。その整形手術も設備の整った大きな病院でなければできない。そして、その大病院は非常に高額で、野良猫割引も一切ない。  その骨盤の手術以外にもどんな検査や治療が必要かわからないから、総額でいくらかかるかわからない、それでも治る保証はないという衝撃的な話だった(第80話)。

手術をするかどうか私が検討すると言ったら先生は驚かれた。本当にいいんですか?いくらかかるかわからないんですよ、そしてそれでも治るかどうかわからないんですよと。

そりゃそうだけど、じゃぁ、どうするんだ。どうしたらいいか考えているその瞬間でも、骨盤が折れてフワフワは痛くて苦しんでいる。
お金もその後のフワフワの身の置き場も、私に案があるわけではなかったが、何かできることがないか選択肢を全て並べて一つ一つ検討しないではいられなかった。この子を救いたいという思いと共に、できることを探さなかったら自分が罪悪感に押しつぶされてしまいそうだったからだ。

お金はいざとなったら支援金を募ろうと思っていたが、それよりももっと心配だったのが、フワフワが半身不随のままだったら一体どうなるのか、私が面倒見られる状態なのか、奇跡が起こって里親が見つかるものなのか、の方が心配だったので、同じように半身不随の猫を保護している人に話を聞いたり、里親会を主催している人に相談したりした。

結果、わかったことは、フワフワが手術をしても下半身不随で自分で排泄ができなかったら、親の遠距離介護と仕事で留守の多い私には引き取ることは無理だということと、里親会での奇跡はないとは言えないと言うことだった。

悩みに悩んだ。 
ベストシナリオは、フワフワが手術の結果、歩けるようになり、無事に里親が見つかること。
そして最悪のシナリオは、高額な手術代を支払っても下半身不随になり、里親さんも見つからず行き場がないという状態だ。

決心がつかない。
私は事故も見ていないし、フワフワには子猫の時に避妊手術をし、以来数回見かけたことがあるだけだ。私には何の責任もない。知らなきゃよかったのか。いや、もう知ってしまったのだもの、時間は戻せない。この子に誰も責任者はいない。私以外に救いの手を差し出す人などいないのは明白だ。 
救いと言っても、私が引き取れるわけではない。
 
じゃぁ、やっぱり関わらず、何もしないのか?
いや、それももはや辛い。
どうする、どうする?

今のまま何もしないと、治る可能性はゼロ。もちろん里親など探せる状態ではない。
それより、検査もしないとどこか痛めて苦しんでいるかもしれなくても治療もできない。とりあえず、検査と手術をすれば、痛みと苦しみから救ってやれ、治る可能性も出てくる。そうしたら里親が探せる可能性も出てくる。

それでも治らないかもしれないが、それで何が困るのか?お金だ。
根拠はないが、お金は支援を募れば幾分かは集まるような気がしたし、私が引き取ることができないのは明らかだが、それは手術の結果を見てからまた考えようと思った。元来楽観主義ではない私が珍しく楽観的になった。

覚悟を決めて病院に電話した。手術代は私が何とかしますから手術お願いしますと。先生は驚かれたが、「そこまで言ってもらえるなら、すぐに処置をしてMRIと整形外科がある病院に運べるようにします。」と喜んでもらえた。

そして相談にのってくれた人達に報告。特に、里親会の主催者の人に、フワフワが治ってきたら里親会に参加させてくださいね、とお願いしたら、とても喜んでもらえた。
早速、治療費の支援の集め方を研究。SNSやクラウドファンディングなどを検討した。

そして翌朝。
朝一で病院から電話。フワフワが亡くなったと。

え?私は絶句した。折角手術させる決断してもらったのにと先生もがっかりされていた。もしかしたら内臓に損傷があったのかもしれない。亡くなるような状態だったのに、シャーシャー威嚇していたのは、よほど怖くて最後の力を振り絞ったのだろう。苦しかっただろうに、不憫だ。

私が半日悩まなかったらフワフワは救えたのだろうか。シマコさんも一日待たずに、すぐに私に相談してきたらよかったのだろうか。
いや、いくらなんでも50万、100万かかるかもしれないものを全く考えもせずに決断は出来ない。仕方なかった。ごめんね。

あとから考えたら、これはフワフワが私に気を遣って、もういいよ、あんたには無理だよと遠慮したのかもしれないと思った。恐らく手術してみたところで、下半身不随のまま、引き取り手もいなくて、私には手に負えない事例だったのだろう。

相談にのってくれた人達に状況を報告したら、私に救おうと思ってもらえたあとでよかったと言ってもらえた。フワフワの為によかった、という意味で言ってもらえたのだが、いや、そうではなく、私の方がそれでフワフワに救われたのだ。私が決断をする前にフワフワが死んでしまっていたら、私は相当罪悪感に苦しんだだろう。私が苦しまないよう、私が救おうという決断をするまで一晩踏ん張ってくれたのではないかと。これはフワフワの優しさであり、私への恩返しであったのだろうと思った。

この事件で思ったことは、やっぱり出会いは運命なのだろう、私に出会った子は、私に救ってほしくて目の前に現れるのであろうと。だから救ってやらなければならない。フワフワのように、どうしても私の手に負えない子は自然にこのように消えていくのだろう。

この件以来、保護するべきかどうか迷った時には保護することにしている。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:勝気で甘えん坊の三毛/スコミックスのメイちゃん

■関連記事
犬や猫の去勢・避妊手術(ペットタウンの保険編集部)
ペット保険を探そう!
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Google+でシェア
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加