コラム

第71話 号外 譲渡条件解説 その9

2011年2月に里親として龍馬と凜子を迎えたものの(第1話第2話第3話)、その数年後に自分の不注意で龍馬を脱走させてしまい(第5話から第26話)、その捜索中に出会った沢山の野良猫の避妊去勢手術に関わったことで、野良猫救済ボランティアをすることになった。その経緯を時系列でコラムに書き始めて第62話まで来たが、櫂君の里親募集を機に(第63話)里親条件について解説しておきたく、号外を出すことにした。

私が課している里親さんへの譲渡条件は第64話に記した通り。第63話から第69話までで、終生飼育義務、ペット可住宅、留守番が少ない事、うちから1時間以内、定収入があること、完全室内飼育、適切な飼育環境の維持、完璧な脱走対策、決定前のご自宅訪問、医療費一部負担について説明してきた。今回もその続きを。

11、避妊去勢手術
保護主が保護した時に避妊去勢手術が可能な月齢の猫は、基本的に手術してから譲渡するが、子猫の場合は未手術で引き渡す場合がある。その際は里親さんに手術をしてもらうことになる。猫の繁殖率がすさまじいことはこのコラムでも何度も触れてきたように、オスとメスが居る環境で手術は必須だ。片方しか居なくても、猫がうっかり外へ出てしまった10分の間に妊娠していたという話もある。

厳しい審査をされて里親になった人にはありえない話だが、最初の2匹の手術を怠ったがために、あっという間に10匹、30匹、50匹と増え、手術代を支払える状態で無くなり、手術どころかまともな飼育も出来ず、不衛生な環境で病気になったり、酷いケースは飢えて共食いを始めたりするケースもあると聞く。いわゆる多頭飼育崩壊だ。

望まない妊娠を予防するためだけではなく、生後6か月までに避妊去勢手術をすることにより、将来乳腺系、子宮系の病気にならなくて済む。メスだけではなく、オスも手術によってマーキング、喧嘩や外へ出たがることを防ぐことができる。

愛ちゃんという可愛い茶白の子猫の里親募集をしていた時の話。ポスターを見て問い合わせの電話があった。その人はかなり遠方に住む人だったので、そもそも譲渡条件には合っておらず、譲渡不可ではあったが、一つ驚く発言が。一度産ませたい、家族で飼ってみたいと。私は上記の理由でそれは認められないと言ったら、一度だけだと。6匹産まれたらどうするのか、と聞いたら、きちんと飼うと。

私達は1匹でも不幸な猫を減らすために活動している。世の中は私達が救いきれないほど不幸な命が余って殺処分されている。それを人間の好みで増やすなんてとんでもない。するとその人は、自分もペットショップで買わないで里親になろうとしているのだから、思いは同じでしょ、と言った。里親になってくれることはありがたいが、日々活動で苦労している私達は、1匹でも増やしてほしくない。その人も私達と一緒に現場に出てどれだけ子猫が生まれ、捨てられ、保健所にもちこまれ殺処分されているか一度見たら、気持ちも変わるのではないかと思う。私は断固として否定した。沢山の命が余っているのに、人間の好みで増やすことは認められません、もし、乳飲み子を飼いたいなら、沢山いるから、どうぞもう1匹でも2匹でも迎えてくださいと。先方はそーお?と納得はしていなかったようだが、そういう発想もあるということを知ってくれただけで良しとしよう。

このような現実を知らない人と話をする時は、無知に怒りを覚えるのではなく、啓蒙する機会があってよかったなと思えるようになった。私も成長したもんだ。

12、毎年のワクチン・定期的な健康診断・必要に応じた医療
これは終生愛情をもって飼育するならば言うまでもないことだ。皆さん当然と言って下さる。具体的に何をどこまでというのはその家庭の経済状態にもよるので、これまでは具体的には何も指定しなかったが、やはりある程度の方向付けは必要かと思い、最近いくつか具体例を付け加えた。

健康診断については7歳以上は必須、それまでは1年に1回推奨と。猫は病気になってもそれを表現しないので、ぎりぎりまでわかりにくい。具合が悪そうだと思って連れて行くと手遅れということもあるからだ。私も実はうちの猫は健康なので、健康診断は特にしていなかったが、今年6匹全頭、血液検査だけでなく、鎮静かけてレントゲンやエコーなど、徹底的な検査をした。すると、2匹のお腹の中には結石が。早期に発見したのでフードを変えるだけで対応できた。そして2匹にひどい歯周病があり、それは麻酔をかけているので抜歯した。この2匹は人馴れしていないので、普段近寄って来ず、歯の状態は確認できないのだ。また2匹にメタボの兆候。糖尿予備軍。これも早期に発見したので、フードで対応。

このように一見元気そうに見えても、問題が隠れていることもある。早く発見することによって、医療にかけなくてもフードで対応できる。

病気になった場合、どのような治療をするかは人間の場合も、他人が強制することはできないように、猫の場合も飼い主が決めるものだから、立ち入れないと思っていたが、最近ある事例を聞いて、末期の緩和ケアは必須と付け加えた。それはある飼い主さんから前の亡くなった猫の話を聞いた時のことだ。猫は癌で亡くなり、きちんと看取った飼い主さんだが、病院に連れて行ったところ、相当高い医療費を提示されて、そんな高額な医療費をとるなんて、その医者はビジネスでやっているに違いないと思い、連れて帰って自宅で看取ることにしたそうなのだ。その後、癌の痛みでその猫は苦しみ、血を吐き、見ているのが辛かったと今でも涙が出ると、その人は言った。私はそれを聞いて、譲渡条件にせめて痛み止めなどの緩和ケアだけは必須にしようと決めた。抗がん剤や高額の医療までは強制できないし、家庭の価値観というものもあろうが、人間だってモルヒネなどの痛み止めは使うだろう。猫にも痛み止めだけはお願いしたい。

動物には人間と違って安楽死という権利がある。これはとても重いトピックだし、獣医師の間でも、動物愛護者の中でも意見は様々なので、また別の機会に。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:勝気で甘えん坊の三毛/スコミックスのメイちゃん

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