コラム

第6話 龍馬脱走事件 その2

夢なら覚めてと祈ってみたが、やはり事件は現実だった(第5話参照)
夜11時近く。いつもならまったりくつろいでいる頃なのに、そこに龍馬はいない。
確実に私の不注意で、龍馬はマンション2階のベランダから下に飛び降りてしまったのだ。
真っ暗闇に向かって呼びかけても返事はない。どんな探し方をしたらよいのかもわからず、取り急ぎマンションの1階の住人に電話して、1階のベランダに龍馬が迷い込んでないかどうか確認してもらったが、いないとのことだった。本当は家に入れてもらって自分の目で確認したかったが、それはさすがに遠慮した。

そして龍馬の譲渡主のSさん(第1話参照)にも連絡。Sさんはベテラン猫ボランティア。沢山の猫を保護し譲渡しているので、脱走の事例を多く知っている。
その時の私には理解できていなかったが、自分でも野良猫の保護や里親探しをするようになった今、私のような不注意な里親は大迷惑、こんな里親には譲渡したくないと心から思う。忙しい毎日なのに、不注意な里親を助けに行く暇など本当はないのだ。自分で何とかしろと言いたいところだろうに、そうすると猫が心配だから助けに行かざるを得ない。そういう事情もあり、里親探しをする時は、自分の家から近い里親さんを選び、自宅を見せてもらい、脱走対策を十分にとってもらうことを譲渡契約に盛り込むボランティアさんが多い。(どこまで立ち入るかは個々のボランティアさんの考えによる)。
優しいSさんはうちからは車で片道1時間弱なのに、怒りもせず予定をキャンセルして早急に来てくれることになった。

とりあえずのSさんのアドバイスは以下の通りだった。

  1. 龍馬の性格だと飼い主が呼んでもパニックして出てこない。しばらくは飛び降りた付近にじっとしている。
  2. とにかく遠くへ行ってしまわないように、餌と自分の匂いのついたトイレ砂を自宅周囲にばらまき、時々名前を呼びかけて飼い主の声を聞かせる。(餌まきは野良猫を集めてしまうので近隣への説明が必要)
  3. 近所で移動している可能性もあるので目撃情報を収集する。至急ポスター貼り、チラシ配布とポスティング、聞き込みをする。
  4. 手で捕まえようとしない。そもそも抱っこが嫌いな子なので、捕まえて抱きかかえようとすると、そこから自宅に連れて帰るまでの間に爪でひっかいてでも確実にまた逃げ、どこへ行ったかわからなくなる。
  5. 捕獲器で捕まえる。もともと野良猫だった龍馬は、最初に捕獲器で捕まえられて保護されたので、二度と簡単には入らないが、お腹が空けば必ず入るから長期戦で考えること。

眠れないまま翌日になり、夜遅く帰宅後ベランダから覗くと、「にゃお」。龍馬だ!暗闇で顔は良く見えないが、キラリと光る眼が二つ。1階の住居の窓のひさしの上まで上って、2階のうちのベランダを見上げて細い声で鳴いていた。そこからジャンプして2階に帰ってくることができないのは、私にも龍馬にも明白だった。
「りょうちゃん、待ってて。すぐに助けてあげるからどこへも行かないで。」と言ったものの、どうやって助けたらいいのか。ロミオとジュリエットさながら、ベランダから途中まで上がってきている龍馬に手を差し伸べてみたものの、届く距離ではない。
何か紐でもたらせばよじ登れるか?いやいや、オランウータンじゃないんだし。
ザルを紐でつり下げる? ミカンの量り売りみたいに。しかし、そこに入れば2階から引き揚げてもらえると、どうやって龍馬に伝える?動かした途端パニックして飛び降りてしまいそうだ。
色々な物を取り出し、あーでもない、こーでもないと検討したり、龍馬の姿を確認したくて懐中電灯で照らしたりしていたら、龍馬は怯えて隠れてしまい、それから何度呼んでも出て来なくなってしまった。
泣きそうになりながらSさんに電話し、「龍馬いたんです。ベランダの下から見上げて鳴いていました。でもまた見えなくなりました。」と言うと、
「りょうちゃん、帰りたいんだわ。今から捕獲器を持って行きます。」と言ってくれた。

Sさんを待つ間、私は龍馬のいるところに行こうとしたが、そこはマンション内のメンテナンス用通路。どうやったら入れるのかわからない。その時は、1階の住宅の玄関から室内へ入れてもらい、その家のベランダから塀を乗り越えて外へ出る方法しか思いつかなかった。夜中ではあったが、家族同然の龍馬の命がかかっているのだから、非常識を詫びながら1階の住人に再度電話し、猫が1階にいた話をした。
結局 家に入れてもらえる話にはならなかったが、敷地にある塀によじ登って乗り越えればそこに到達できる方法を教えてくれた。事情を知らない人に見られたら通報されそうな姿だったが、深夜に雑草生い茂るその通路に娘と2人で侵入した。
しかし龍馬の姿は見えなかった。
そしてその後、龍馬だと確信できる猫の姿を見かけることはなくなった。
続く。

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