コラム

第3話 突然2匹に。 ~猫には猫の世界がある~

龍馬の里親になって1か月ほどした頃(第1話参照)、保護主の猫ボランティアSさんから電話がかかる。
「その後どうですか?正式譲渡ということでいいですか?」とSさん。通常は猫を里子に迎えたら暫くお試し期間と言うものがある。
里親はその猫を生涯家族として育てる事ができるか、保護主もその里親が猫の生涯に渡り信頼に足る飼い主となり得るのか、お互いに評価する期間だ。生き物を託す側の保護主としては、あちこち移動させると猫に負担がかかるので、簡単に返すような人とは最初から話を進めたりはしないが、里親側も真剣に検討した結果、どうしてもダメならば返してもいい期間でもある。その時点で龍馬はまだ布団に入ってくれないし、友達や親類が来ても隠れて出て来ないので、決して思い通りの猫にはなっていなかったが、もっと慣れてくれれば願いも叶うだろうと私は楽天的にとらえていた。なんたって私はどんな猫にも愛されるはずだという何の根拠もない自信があったのだから。
「このまま迎え入れます。」と答えた。それに、いくら返してもいい期間だと言われても、1か月もうちに居る龍馬に、やっぱり出て行ってなどと言えやしない。これは実際家に猫を入れてみて初めてわかった感覚だ。そんな私は里親初体験の素人飼い主としては珍しいタイプだったのかもしれない。ベテランボランティアのSさんは私がそうなるであろうことを見抜いていたのか、驚くようなコメントを発した。

「ありがとうございます。では龍馬ちゃんをよろしく。ところで、龍馬ちゃんと仲良かった凛ちゃんというメス猫がいるんですが、その子も一緒にもらってくれませんか?」

は?私、仕事も忙しいし、どうしても一匹と最初から言ったじゃないの?
無理、無理、無理、むりーっ!!
と主張するも、「いや、一匹も二匹も変わらない。それに龍馬ちゃんのためにも遊び相手がいた方がいいし、そこのケージは大きいから一緒に入れて大丈夫。」とSさんに食い下がられる。

そんなあ。欲しいなんて言ってないのにい。
「何かあったらいつでも引き取ります。」とSさん。
え? 終生飼育が条件じゃなかったの? 終生飼育は譲渡契約書にも記載されている絶対条件のはず。今から考えれば、私は絶対返さないと読まれてしまっていたのかもしれない。
最後はお願い、お願い、お願いと、拝み倒されてしまった。

間もなくして凛ちゃんがやってきた。
龍馬は私が選んだだけあって、顔もスタイルも抜群だったが、選ばず連れてこられた凜ちゃんは、足も短く食いしん坊で太めでまるで狸。

げ、不細工。容姿端麗、頭脳明晰の龍馬とは全然似てないじゃん、不合格!というのが第一印象。
凜ちゃんは、1か月離れていただけで龍馬には忘れられたのか、シャーシャー威嚇され、自分の立場を察知していたのか、ケージの中で居候してすみませんとばかり小さくなっていた。
受け入れを渋った私が、凜ちゃん用にピンクのベッドも用意していたのを見て、Sさんは安心した様子で二匹を置いて行った。

【凛子】
3凛子

龍馬と比べて頭も悪く、鈍くてドンくさい凜子。
他人が来ると、一目散に逃げ隠れする龍馬と共に隠れようとするものの、あたふた隠れる場所を見つけられず、来客者と鉢合わせしてしまい大パニック。走ろうとしてつまずく。外猫時代にひもじい思いをしたのか、つまみ食いが激しい。
しかも、猫には食べられないだろうというような、キャベツの芯やりんごまで咥えて逃げる。食べられるときに何でも食べておこうという野良猫時代の習性だろうか。
それもテーブルや流し台に上がったら怒られることを理解している賢い龍馬と違って、トロい凛子は必ず見つかって怒られる。いるんだなあ、猫にもこういうダサい子が。段々不憫になり、おそらく他に貰い手はないだろう凛子は、私のところに来て正解だったのだろうと思い始めた。

それに本当に二匹は仲が良い。
凜子はいつも龍馬の後をついて歩く。仲良しの二匹を一緒にしてみて、楽しそうに追いかけっこをしたり、グルーミングしあったり、狭い箱に一緒に入って寝たり。猫には猫の世界があるんだとよくわかった。自分の都合だけで仲良しを引き離すようなことをして猫に申し訳ないことをしたと思った。

今、里親会でも最初は一匹からと言われる里親さんは多い。仲良し兄弟姉妹を二匹セットでもらってほしいと言っても、どうしても一匹だけと言われ、ご縁に結び付かないこともある。
私もその気持ちはよくわかる。でも実際、後になって猫の視点で見たら、仲良し二匹にしてやって本当によかったと思った。
時間差ででも良いので、仲の良い子は二匹で検討してやってほしいと思う。猫には猫の世界があるのだから。(勿論一匹飼いが適した猫もいるので保護主と要相談)

かくして猫を飼い始めて1か月で、既に状況は想定外の二匹に。
じわじわと多頭を抱える典型的な猫ボランティアへの道のりは始まっていた。

【龍馬(右)と凛子(左)】
3龍馬(右)と凛子(左) (1)

コラムニスト:Candy (キャンディ)

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