コラム

第2話 龍馬到着,その日の事件~元野良猫の里親になるということ~

第1話では長年の懸案であった猫の里親になることになった経緯について書いたが、実はその初日、しかも猫が到着して1分後に早速事件が起こった。
平日は仕事で留守がちな我が家。猫が来ていきなり長時間のお留守番とならないように、金曜日の夕方に自宅に届けてもらい、土日はゆっくり猫と過ごすつもりで、龍馬という名前も用意してウキウキしながら待っていた。

龍馬と譲渡主Sさん到着。

マンション玄関まで迎えに降りる。Sさんは車を駐車しに行き、私はキャリーに入っている龍馬を受け取り、一足先に自宅へ。
キャリーの外から覗いてみる。
臆病だと言われた通り、龍馬は固まって微動だにしない。
何で俺はこんなところに連れてこられたのだと言わんばかりにそっぽを向いている。

私は自分の家で猫を飼ったことはなく、子供の頃に祖母宅で飼っていただけなのに、猫についてはなぜか妙な自信を持っていた。私は子供の時から野良猫に思いをかけてきた。どんな猫も私には気を許すはずだ。キャリーで固まっている龍馬も私にはすぐ懐くはず、と何とも無知でおめでたいことを考え、こともあろうにキャリーの蓋を開け、顔をつっこんで中を覗いてしまった。

しばらく我慢していた龍馬が大パニックを起こし、キャリーから猛烈なスピードで飛び出した。びっくりした私がのけぞっている間に、龍馬はリビングからキッチン、隣の和室まで走り回り、壁を縦に駆け上がり、カーテンに爪をたてて上り下り、隠れる所を探して、目にもとまらぬマッハ級の速さでぐるぐる走り回る。まるでパチンコの玉。壁を駆け上がった瞬間に、空から霧が降ってくる。

何これ?ちょっと臭い?

げ、もしかして、おしっこ?

恐怖のあまり失禁してしまったようだ。
大パニックしているとSさんが上がってきた。
事の次第を説明すると、ベテラン猫ボランティアのSさん、私たちを部屋から出し、タオル一枚で龍馬を捕まえてケージに入れた。
「慣れるまでケージから出さないでね、出したら隠れて出て来なくなり、そのまま家庭内野良になるかもしれないから。 ケージの中で毎日名前呼んで触ってあげたら、そのうち慣れるから。」
と、不安がる私を尻目にSさんは帰って行った。
え、いや、そんな、まだ帰らないでえー。
なんとショッキングな初日。しかし龍馬の方はもっとショックだったはず。
恨めしそうな顔をしてケージの奥にうずくまっていた。
すぐにでも抱っこして一緒に寝られることを夢見ていた私は、初日早々すっかり自信を無くしていた。

【龍馬】
龍馬

これが私の里親第一日目。
龍馬もショックなスタートだったせいか、その後 ケージから出てくるようになるまでに1か月近くかかったものの、それから5年、今では龍馬はゴロゴロすりすりするし、毎日私のベッドの上で寝る。ミャーミャーとよく家族とお喋りもする。
しかし、しかし、未だに抱っこは嫌がる。10秒ほど仕方なく抱っこさせてくれるが、それ以上になると何やら不安になるらしく逃げていく。毎日私のベッドの上で寝るが、私の足元で、私にお尻を向けて寝る。ベッドの中には入って来ない。こんなに可愛がっているのに信用してくれてないってこと?と聞いてみても返事はない。

その上、家族には慣れても他人は全くダメ。友人や業者が来ると速攻で隠れる。学習能力も高くピンポン鳴っただけで見知らぬ人が来ることを察知して隠れる。龍馬を見たいと、田舎からやってきた実家の母はとうとう顔を見ることなく帰って行った。

正直、こんなはずではなかった。

でもそれが元野良猫の里親になるということだ。人馴れしてない保護猫は保護される前に過酷な外猫生活を送ってきており、人間不信になるような嫌な体験が記憶に残っているのだろう。でもそれは猫のせいではない。野良猫は無責任で無慈悲な人間が引き起こした現象だ。好きで野良になった猫などいない。それぞれ事情を抱えた訳あり猫たちばかりだ。

このコラムを読んで下さる猫好きの皆さん、里親になることを検討したら、自分の好みだけで猫を選ぶのではなく、自分の置かれた環境とそれぞれの猫の事情を照らし合わせ、自分が飼える猫を譲渡会などで保護主と十分に相談してほしい。

留守が長い人は、世話が必要な子猫がほしいなどと言わないで、留守番のできる大人猫を迎えてやってほしい。一人ぼっちが苦手な猫は二匹一緒に迎えることを検討してほしい。猫は環境の変化に弱い生き物。レンタルするかのように、気軽に借りて返していては猫の負担になる。猫を家族として迎え入れる覚悟と環境が整うまでは安易に飼おうなどと思わないでほしい。覚悟を決めたら、思い通りにすぐに懐かなくても 長い目で見てやってほしい。
私だってこんなトホホな初日だった。でも今では無くてはならない大事な家族。
不幸だった野良猫を一匹救ってやれた満足感だけでなく、私も猫に幸せにしてもらっている。

コラムニスト:Candy (キャンディ)

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