コラム

第25話 猫が見える人、見えない人

今から3年半前のこと。里子に迎えた龍馬(第1話第2話)を自分の不注意から脱走させてしまい、その後26日間地獄の捜索(第5話から第22話)を経てやっと発見。日常が戻るかと思いきや、自宅に来てくれていた龍馬の譲渡主Sさんと共にまた野良猫に関わるボランティア活動に巻き込まれてしまう(第23話第24話)。

やっとそれも終わった帰り道、またSさんが猫を見つけてしまう。
私には見えないのにSさんにはどんどん野良猫が見えてしまうようだ。
この現象は私ものちにボランティアをするようになってから体験することになる。
それまではこの地域に10年以上住んでも、野良猫をほとんど見かけたことがなく、猫はいない地域だと思っていた。
それが龍馬の捜索中、どれだけの野良猫に出会ったことだろう。
龍馬を探す為に、猫が活動する時間に猫がいそうな場所に行ってみると、いるいる、野良猫は本当に沢山いるのだ。可哀想な環境で生きている子が大半だ。
猫の世界に興味がない人には猫は見えないもののようだ。
私のように猫が好きであっても、毎日忙しい日々で、野良猫問題に関心を持っていなかった当時は見えなかった。龍馬捜索中、猫の世界に入って行った私、そしてボランティアをするようになった今の私には、いやというほど見える。
猫に興味ない知り合いによく言われる。自分の家の近所には野良猫なんかいないよ、と。
いや、猫に関心がないから見えないんだよ、と私は答える。
見えなくても、実はどこにでも野良猫はいるのだ。

このコラムで何度も書いたように、避妊去勢していない野良猫を放置するとあっという間に繁殖してしまう。1年で5倍以上に増える可能性も。
猫の為だけではなく、人間の環境の為にも、近所の餌やりトラブルや虐待回避の為にも、野良猫を増やさないよう、近隣で協力してお金を出し合って避妊去勢をしてほしい。捕獲器を使った捕獲についてはボランティアに助けてもらった方が無難なので、動物病院や保健所に相談してボランティアを紹介してくれるよう頼んでみてほしい。
念を押すが、野良猫はどこにでもいる。見ようとしない人に見えないだけ。
猫ボランティアは猫好きだけがすることではなく、猫を嫌いな人こそ、野良猫を増やさないための協力をしてほしい。

また野良猫を見てしまった3年半前のSさんの話に戻る。
「また猫だわ」と悲鳴を上げたSさん。避妊去勢手術していない野良猫は見たら手術しないと気が済まないようだった。
もともとたくさんの猫を保護して里親探しをしていたようだ。
以前自宅に何匹居るんですかと聞いたら、恥ずかしくて言えないという答えだった。
それなのに、龍馬の捜索開始以来、手伝いに来てくれてうちの地域から何匹の猫をSさんは連れて帰ってくれたことだろう。

うちの近隣は野良猫事情が悪く、未手術の野良猫が沢山。
龍馬の捜索中に、同じ猫が何度も捕獲器に入るのを見て、餌も足りていないのだろうとSさんは嘆いていた。
捕獲器は餌で釣るのでお腹が空いていないと捕まらない。猫も馬鹿ではないので、一度捕獲器で捕まって怖い思いをした猫はそう何度も入らない。それでも入るのはよほどお腹が空いているのだろうと推測できる。
Sさんはうちの近所にボランティアがいないのだろうと思い、見かける猫をほっておけなかったらしい。
有難いことではあるし、素人の私がベテランボラさんに対して失礼だとは思ったが、さすがに私は心配になって、
「Sさん、もうやめましょう、キリがないですよ!」と言った。
Sさんはいつも穏やかな人で、「これで止めるから」と言った。

なぜそこまでできるのか、当時の私には理解できなかった。
今の私もそこまではやっていないが、周囲の友人や家族から同じように、何でそこまで?キリがないじゃない?ともよく言われる。
当時は私もそう思ったが、いろんな悲惨な現実を見た今はキリがないという言葉が大嫌いだ。
確かにやってもやっても不幸な猫は出てくる。私の目が黒いうちに終わるとも思えない。
どんなに減らそうとしても減らないのは、増やしている人がいるからだ。
手術しないで無責任に繁殖させて、捨てたり、殺処分に持ち込んだり、脱走させても探さなかったり。
またはビジネスの為に、命を大量生産し、無責任な飼い主にも売りつけ、余った在庫を単なる物として処分する悪徳業者がいるからだ。
この状態で、キリがないという理由でボランティアが活動やめたらどうなるだろうか。
あっという間に野良猫だらけになるのだ。この問題は長くなるのでまた後日。

ボランティアさんの活動には本当に頭が下がると思った。Sさんだけでなく、私とは何の関係もないのに捜索の手伝いをしてくれたXさんもそうだが、皆猫が見える人だ。
悲惨な現実を見て活動してくれていて、やっとこの状態なのだからやめられるわけがないのだ。
キリがないということを理由に何もしない人は、現実を知らないか、命に対する心のない人だと思う。

当時の私はそんな活動は忙しい自分にはできないと思った。龍馬捜索中に関わった避妊去勢手術と病気の子の救済、といっても捕獲してお金を出しただけだが、それだけでもう充分やった気になった。
今後自分にできるのは、そういう活動に対して寄付をすることだけだと思った。

かくして龍馬の脱走事件、そのおまけについてきたノミ屋敷事件など、一連の騒動が終了し、私は龍馬との平和な日常を取り戻し、仕事に奔走する忙しい日々の中、また以前のように全く野良猫を見ない日々、いや、見えない人になっていった。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:大田区のメイちゃん

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