コラム

第23話 ボランティアの入口へ。 ~ノミ屋敷の猫達~

3年半前のこと。里親として迎えた龍馬(第1話第2話)の脱走事件が1カ月ぶりに解決(経緯は第5話から第22話)したので、直面した色々な事件や出会ってしまった野良猫は忘れ、仕事に気合いを入れ直し、日常の生活を取り戻すつもりでいた。
しかしその前にどうしても気になっている野良猫がいた。それは龍馬に似ているという目撃情報をもらってかけつけた時に見つけた皮膚病らしいキジ虎の子猫だった。(第18話
いつも同じ場所にいて人懐こく、おまけに皮膚がボロボロだったので不憫に思ったが、その時は龍馬の捜索で手一杯でどうにもしてやれなかった。

龍馬を発見しほっとした当日、龍馬の譲渡主でベテラン猫ボランティアのSさん(第1話)が自宅に来て龍馬の病院にも付き添ってくれていたので、私はSさんにその子の話をし、費用は私が出すから病院に連れて行き里親も探してほしいとお願いし、現場に一緒に行ってもらった。(ここまでしてくれるボランティアは滅多にいないことを後に知ることになる。その件はまた後日。)Sさんはその子を捕まえ車に乗せた。その子は疥癬(かいせん)という皮膚病だった。疥癬は気が狂うほど痒い病気だそうだ。それに仔猫かと思ったらもう7-8歳。皮膚病以外にも何か病気がありそうで、長くは生きられないだろうとSさんが言っていた。そのキジ虎を車に乗せていると、目の前のアパートの塀の上に別の子猫2匹と母猫を見てしまった。Sさんは「手術しなくちゃ」と車の中から捕獲器を3台出してきた。ボランティア7つ道具はいつも車に積んであるらしい。
そのアパートは古くて住民が居るのは一戸だけ。その玄関前には猫の餌が置きっぱなしになっており、不衛生な雰囲気が漂っている。部屋の中からこれまた不衛生な感じのおじさんが出て来た。

Sさんは、「おじさんの猫なの?だったら手術しなきゃ。」と話しかけた。
おじさん、「うちの猫じゃねえ。それにオスだから手術はいらねえ。」
Sさん、「母猫もいるでしょ。このままだとまたすぐ産む。それにオスでも手術しないとだめ。未手術のオスは遠くに行ったり喧嘩したり事故にあったりして危ない。
私が病院連れていくから手術代出してくださいよ。」
おじさん「そんな金ねえ。ほっといてくれ、余計なお世話だ。」

よくある無責任餌やりの典型だ。
私も今でこそSさんと同じように、餌やりを見つけたら手術を勧めるが、その時は見ず知らずの人に説教めいたことを言いお金まで出させる行為が、とても奇異に映り自分には絶対出来ないと思った。

龍馬の捜索中は、私も捕獲器に入った野良猫を相当数手術させたが(第7話第8話)、それは龍馬を探す為であったし、近隣の人を巻き込むのは考えただけで面倒だったので自分で全て支払った。捕まる野良猫の数が半端なく、もうこれ以上お金は出せないと何度となく言ったこともあり、その都度Sさんには近所でカンパ集めるように勧められたが、捜索だけでも近隣に迷惑かけているのに、お金まで集めて捜索しにくくなったり、何らかの拍子に揉めたりするかもと、考えたるだけで嫌だったのだ。
野良猫は、私一人の財源で賄える問題でもないし、野良猫は本来地域で共生する生き物なのだから、地域の問題として地域全体で取り組むべきことであるのだが、とにかくお金の話をしたくなかったので、私が破産する前に龍馬が見つかってくれてよかったと思っていた。

実は今でも私はそうなので、自分一人の資金で賄える範囲の活動しかできていない。本来それでは不十分であり問題解決に至らない。これは大事な話なのでまた後日詳しく書きたい。

アパートの猫達の話に戻る。
どう見ても生活苦しそうなこのおじさんに、猫の手術代など出せるはずもないことは明白であった。
私、「Sさん、このおじさんにお金出させるのは無理ですよ。」
Sさん「だからって餌やっている以上、1000円でも出すべきでしょう。」
おじさん、「俺の猫じゃねえ、知らねえ。」を繰り返す。

その騒ぎを聞きつけて、その向かいの家から若い女の子が出てきて言った。
「おじさん、嘘だ!いつもご飯やってるし、その猫達家に出入りしているじゃないの?
猫達みんなノミだらけ。その皮膚病の子も前からずっと痒がっている。私も何回かシャンプーしてやったのよ。」
ばつが悪くなったおじさんは風呂屋へ行くと逃げていった。
その間に猫たちを捕獲。餌をもらっているはずなのに、おいしい缶詰で子猫2匹はすんなり捕まった。ろくな餌をもらっていないのだろう。Sさんが医療チェックをして里親探しをしてくれることに。

親猫はその日は捕まらず。その女の子に協力してもらい、後日私が捕獲を試み、捕まったらSさんに連絡することに。
私にとっては自分の猫とは関係ない野良猫を捕獲する初の真のボランティアだった。
本来は自分で捕獲、病院での健康チェック、保護、里親探しまでやるのがボランティアだから、私がやっていた捕獲だけなどボランティアの入口の入口だ。

しかし私は、そもそも一度しか見たことがないその疥癬の子の治療費を出すだけでも充分だろうというつもりだったのに、無関係の無責任餌やりの代わりに、通行人の視線を浴びながら大きな捕獲器を設置し野良猫を捕まえる、それだけで相当な負担を感じながら、私にできることではない、早く終わらせてやめようと思ったことを覚えている。

しかし、その母猫が意外と難しく手を焼き、連日現場に通うことになった。
そして、さっさとやめるどころか、また次の事件に巻き込まれていくのであった。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:大田区のメイちゃん

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