コラム

第20話 龍馬脱走事件 その16

Sさん(第1話)と言う猫ボランティアさんから龍馬を譲渡してもらい里親になって1年半後に私の不注意で脱走させてしまう。捜索を開始してから25日の間、龍馬の姿を確認できないままあらゆる事件が起こり疲労困憊。(経緯は第5話から第19話)。
第19話の最後に触れたように、25日目の夜、龍馬を捕まえるために捕獲器をしかけている空き家で苦しそうな白黒の子猫を見る。外傷はないが呼吸が苦しそうだ。

この場所は、龍馬が立ち寄ってくれるように私が餌や毛布を置いている。この苦しんでいる子猫が自分でここまで来たとは思えない。誰かこの子を見つけた人が、自分では保護せず、この場所なら誰かが保護しに来るだろうと置いて行ったのだろう。そういうのも腹が立つ。助けるなら自分で助けろ。
私は第17話第18話第19話の事件で、龍馬捜索以外のことに時間と労力を割くのはもう嫌だと思っていた。龍馬に全然会えないのに、野良猫にももう関わりたくない、一体いくらお金出せば終わるのだ、と苛ついていた。
とはいえ、当時はまだボランティアでもなかった私でも、さすがに息も絶え絶えの子猫が目の前にいるのに放置はできなかった。しかし、どうしたら良いのかもわからず、どんな病気かもわからない野良猫を自宅に入れるのにも躊躇があり、とりあえずSさんに電話した。

Sさんはこんなことには慣れているようで、あらまあ、と冷静だった。Sさんは車でも1時間かかる距離に住んでいるので、すぐには引き取りには来れないが、翌日の午後なら来れるので、今日は何とか保護してうちに置いてほしいとの事だった。
え、うちに?こんな死にそうな子を?いやだ。苦しんだらどうするんだ、死んだらどうするんだ?そんなところ目の前で見たくない。私、龍馬の事で忙しいのに、この子のこと気にしている余裕はない。誰か代わりに引き取ってよ、と正直なところそう思った。
しかし、それはこの子を最初に見つけた人がした自己中な行為と全く一緒なのだった。可哀想だ、助かってほしい、でも自分は関わりたくないから誰かに押し付けたい。それが大半の人の正直な感想なのだろう。その間の時間だって猫は苦しいのに。

私はどきどきしながら、家にあった小さいケージにこの子を入れて、自宅に連れて帰りご飯と水と与えた。子猫は少し食べてすぐに下痢をした。内臓を損傷していたのかもしれない。人慣れしており、鳴きもせずじっとしていた。

後でわかったことだが、結局この子はSさんが翌日病院に搬送してから数日後に治療の甲斐なく亡くなってしまったのだそうだ。外傷がないので事故ではなく、誰かに蹴られた可能性が高いとのことだった。苦しかっただろうに。私は一晩苦しいまま放置してしまった。私は、どうしてSさんを待たずにすぐにどこの病院でも良いからタクシーで連れて行ってやらなかったのか後悔した。
どちらにしても助からなかったかもしれないが、少なくとも痛みを取り除くことくらいできたのに。当時の私にはそこまで思い至らなかった。
うちには1日しか居なかったが、その子の顔は今でも忘れられない。
それが今でもトラウマになっている。

後でコラムに書くが、それから3年後の現在、その時の後悔が原動力になって最近瀕死の猫を保護し入院させた。
大きな腫瘍が出来ているようで、日に日に食べられなくなりやせ細っていった。見ているのもつらかったが、何の病気かいつまでいくらかかるかわからないのだから、保護するのも勇気がいる。随分迷ったが、当時のことを思い出し、どうしても放置できなかった。炎天下外で干からびて亡くなっているのを発見するのは耐えられないと思い、勇気を出して保護した。
結果は骨肉腫で余命数カ月。保護してやってよかった。その子を助けたからと言って当時の八割れ子猫が生き返るわけではないが、やっと自分で当時の自分を許せるような気がしてきた。

龍馬の捜索に話を戻そう。
苦しんでいる子猫を自宅に置き、その夜、龍馬の捜索を継続。
夜遅くに1km以上離れた所での目撃情報。遠くても見たと聞いたら行ってみなければ気が済まない。
しかし行ってみて龍馬だったらどうするのかについては慎重にしなければならない、いきなり手で捕まえようとして、失敗したら二度と捕まらなくなるという話も聞いたことがある。
龍馬のように警戒心が強い子は、外にいるだけで恐怖でパニックしているので飼い主を見ても無視して逃げ出す事が多いことは私も体験した。(第13話

私が受けた助言は、龍馬を見かけても大きな声を出さず追いかけず、優しく呼びかけながら、すぐに自分がその場に伏せて猫と目の高さを合わせて、おいしいご飯をやる。そしてその日はそのまま帰る。翌日同じ時間に捕獲器を持って同じ場所に行く、ということだった。
猫の目の高さからすると、目の前に立っている人間は巨人に見える。自分の方に伸びてきた手も猫からすると巨大な凶器だ。
これは今でも、里親さん宅に保護猫を最初に連れていく時にも最初に仲良くなる方法として助言していることだ。

目撃現場に行ってみると、似ているが別猫だった。またがっかり。
がっかりしすぎてその瀕死の子猫に優しくできない自分もまた嫌だった。

翌朝26日目。 早朝5時、捜索へ。
近所の庭に仕掛けた捕獲器に入った猫がいた。期待せず覗いてみる。
龍馬? 龍馬だ!
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:大田区のメイちゃん

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