コラム

第17話 龍馬脱走事件 その13

里子に迎えた龍馬が(第1話)私の不注意で脱走して(第5話から第16話)24日目。
だんだん嫌な体験も増えてきたと第16話で書いたが、極めつけの事件がこれだ。

龍馬を捕まえるために空き家にしかけた捕獲器にまた猫がかかる。首輪もなく人慣れしていないようで威嚇する。避妊去勢済みのしるしである耳カットも(第8話)ない。首輪も耳カットも無い外猫は未手術の野良猫と見なし、龍馬の譲渡主でベテランボランティアのSさん(第1話)に連絡、私がお金を出し手術に連れて行ってもらうことになっていた。(第7話

不幸な猫を増やさない為、野良猫を捕獲して手術するという考え方には賛同するが、ボランティアする意思があったわけではない当時の私には、龍馬も見つからないのに野良猫のためにお金を出し続けるのは、経済的だけでなく気持ち的にも限界があった。
龍馬はSさんにとっても養子に出したわが子同然なので、私と同じ気持ちで捜索を手伝って下さることは有難かったが、野良猫にも全く同じ思いをかけて手術させたり、治療したり、子猫なら保護して里親募集するというところまでは私はとてもついていけなかった。
私が負担しきれない費用はSさんもカンパしてくれることもあった。
今ではボランティアとして私も同じ事をしているが、当時はそこまで理解できず、龍馬を探しに行きたいのに、捜索に出かけるとまた野良猫に遭遇すると思うと気が重くなっていった。
捕獲器の中の猫にも可哀想だと思いながらも、「何で龍馬じゃないの?」と文句を言ってみたりもした。

今回捕獲した猫については、精神的にも疲弊した私にさらに追い打ちをかける第2幕があった。
実は首輪もなく人慣れしていないこの猫は近所の人の飼い猫だったのだ。
近所の煎餅屋のおばさんと龍馬の事で話しているうちに、その猫は近所の別の人の飼い猫であり、いつもは帰ってくるのに昨日は帰って来ないと探していたことや、さらには避妊手術済みだった事が判明。
すぐにSさんに電話したが、猫はもう手術室に入ったあとだった。
他人の所有物を勝手に捕え、手術をしてしまったらどうなるのか、一瞬心配にはなったが、飼い猫を首輪もせず外に出し、事故や虐待に遭ったり野良猫と思われて保健所に持ち込まれたらどうするのだろう、無責任な飼い主だと腹立しさの方が優先した。
Sさんも首輪をしていない外猫は野良猫と見なすという条例もあるのだと言っていた。

普通なら手術後の野良猫は都合の良い時に元の場所に放すのだが、この子は飼い主に返す為、Sさんは飼い主の都合に合わせ3日間自宅で預かり、車で片道1時間を搬送してきてくれた。
しかし、こともあろうにSさんは関係ないこの煎餅屋のおばさんにひどく怒られたのだと言う。遠くから関係ない地域に来て猫を捕まえ、勝手に人の飼い猫を手術してしまったという理由だそうだ。
私は呆れた。
おばさんは猫のことは何も知らない人だったが、煎餅屋さんがSさんに言うべきことは、この地域の為に労力と時間とお金と気持ちを費やしたことへの感謝ではないのか?
その飼い主も、飼い猫を首輪も付けず危険も省みず外に出したことに対する責任を感じ、それが引き起こしたこの事件で少なからず面倒をかけたSさんへのお詫びをすべきではないのか?
私はそう思ったが、その飼い主は私にまでその煎餅屋のおばさんに謝った方が良いと言った。
面倒な人だからという理由で。

私が?関係ないおばさんに?関係ない飼い猫を捕まえたことを?野良猫の手術という近所では誰もやる人がいないことにお金と労力をかけた私が謝るの?

私が謝るべきことがあるとしたら、自分の猫を脱走させ、その捜索で町中を騒がせ迷惑をかけていることだ。それはもう以前から、おぼさんを含む全てのすれ違う人にしてきているつもりだ。そしてもう一つ、その猫に対しては、不必要に再度手術をして怖い思いをさせ可哀想だったと十分に謝った。

Sさんはもともと穏やかな性格でもあるが、長い間ボランティアをしているので、誰に何を言われてももう達観している感じだった。煎餅屋さんには面倒だから謝っておいたわ、それより猫の飼い主に対し、くれぐれももう外に出さないようにしてもらうことが大事だと。
何もしない、何も知らないで文句だけ言うような人には嫌というほど遭ってきているのだろう。そんな人を説得し考えを改めてもらう時間などない、それよりも目の前の可哀想な猫を救うことに時間を割きたいのだろう。
当時の私はそのような考えにはなれなかったが、とにかく龍馬を探さねばならない。今後まだ協力してもらわなければならないこともあるだろうと、気持ちを抑えて煎餅屋にも謝罪に行った。

どうしたことか、その時この煎餅屋おばさんは余計な事を言ったかしらと反省してくれていた。そしてその飼い主もかかった費用の一部を寄付としてSさんに渡してくれ、その後龍馬の捜索に協力してくれるようになった。
動物の福祉を考えれば、この事件で少しは動物の為になる理解者が増えて良かったと考えられるが、私には精神的後遺症がとても大きかった。
野良猫ボランティアとは何と割に合わない活動なんだろう、海岸のゴミ拾いをたった1回でもした方がお金もかからず労力も少なくもっと感謝されるわい、と正直その時は思った。もう野良猫にかかわるのも、近所の無理解な人間にかかわるのも嫌だ、龍馬の捜索だけに集中したいと思った。しかしそうはいかず、事件はまだ続いた。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

■関連記事
第18話 龍馬脱走事件 その14(Candy)
ペット保険を探そう!
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Google+でシェア
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加