コラム

第16話 龍馬脱走事件 その12

私がボランティアを始める前の話である。
龍馬を里子に迎え(第1話第2話)、なぜかもう1匹凛子がおまけについてきたが(第3話)、平和な猫との日々を過ごしていた。それから1年半、私の不注意により龍馬が脱走(第5話から第15話)。手掛かりなく22日目となった。
見ず知らずの人に協力してもらい感動することもある反面、嫌な思いをすることも増えてきた。

作製したチラシは400枚を超え、追加印刷しようとするとプリンターが壊れた。1分1秒惜しい時に限ってこんなことに。修理に出す暇もなく、手書きに写真を張り付けたものを印刷屋さんに行きカラーコピーする。そのチラシを見た印刷屋のお兄さんが同情してくれ、1枚余分にコピーとって店内に貼ってくれた。そして、毎日自転車通勤なので近所を注意してみておきますねと、言ってくれた。

その日、近くの商店街の喫茶店の人から目撃情報。龍馬に似たような猫が向かいのお肉屋さんに最近来ていると。うちからは700メートルくらい。もう3週間過ぎたのでどんなに遠くでも目撃情報が入れば現場に行くようにしている。猫の集まる時間はいつも3時半ごろとのこと。ちょうど翌日はその時間空いていたので行ってみることに。

23日目 3時半に商店街へ。お肉屋さんで焼き鳥を焼き始めると、ぞろぞろと集まる野良たち。
うわー、手術してない子がこんなに!その近辺には最近ではボランティアさんはおらず、避妊去勢の手術も進んでいないとのことだった。あっという間に3倍、5倍、来年には10倍になると思い、見るだけで胸が痛いが、その時の私にはどうもしてやれなかった。
残念ながら集まってきた猫の中には龍馬はいなかった。

肉屋のおばさんは町中に貼られたポスターで龍馬のことは認識していて、私に、
「その子は来てないよ。随分長いこと探しているようだけど、もう死んでるわよ。悪いこと言わないから、保健所に行って確認しなよ。」と。
私が毎日愛護センターや役所には電話で確認していて、死んで回収された猫の中には龍馬はいなかった旨伝えると、
「電話なんかじゃだめだめ、行ってみなきゃ。ね、こんなに時間経ってるんだから、もう諦めな。」と。

悪気があったわけではないだろうが、人の気持ちを考えないで、何という言い草だろうか、と思った。
私にどうしてほしかったのだろう。今後店の周りを捜索されるのが嫌だったのだろうか。
言いたいことは色々あったが、これからまだ龍馬の捜索を続けていかねばならない、協力をお願いすることもあるかもしれないと思い、気持ちを抑えた。
電話をくれた喫茶店のお姉さんにお礼を言い、店内に龍馬捜索のチラシを置いてもらい帰った。

色々な人がいる。多く優しい人に協力をもらい感動したこともあるが、そういう人ばかりではない。
これが人間の失踪なら常識的には皆協力してくれるはずだが、猫はまだ法的には物であり、助ける義務はない。皆が皆好意的ではない。捜索が長引くと嫌な思いをすることも増えてくる。
心が折れそうになっているところに、その肉屋のおばさんの発言を聞いて、本当に龍馬はもう生きてないのではないかという気がしてきた。
譲渡主のSさんにそう言うと、
「絶対にりょうちゃんは生きている。諦めたら終わり、嫌なことを言う人はいるけど、気にしない」と。
Sさんは長年猫ボランティアとして沢山の里親さんに譲渡してきており、これまでも脱走事件には何度もかかわってきている経験がある。役所にある回収死体リストに上がっていない以上、絶対に生きていると力説した。

私もまた思い直して捜索を続ける。
一度猫が活動する時間の夜中の2時から4時くらいに町を1周してみたいと思っていた。娘に協力を頼み、私も娘も翌日が休みである日を待って、いつもは行かないお屋敷が並ぶ静かな住宅街の捜索に夜中の2時から懐中電灯と猫餌をもって出かけた。
お屋敷には森のような庭があり多くの猫がうろついていた。見たことがない猫が沢山。中にはお腹の大きい猫も。
民家の庭に龍馬に似たような猫発見。声をかけ餌を投げて隠れて様子を見る。
そろそろと餌を食べに出てくる猫。懐中電灯で照らしながら名前を呼ぶと、民家の電気が付き、窓を開ける音が。とっさに娘と2人逃げた。
よく考えたら逃げる必要はなかったのだ。逃げたことで怪しまれたのか、ふと気が付くと、後ろからゆっくり私たちを尾行している車が!
わ、もう逃げられない、いや、逃げることない、ちゃんと説明すればよいのだ、と私たちは覚悟を決め、車の方を向いて立ちどまり、車が近づいてくるのを待った。
高級外車がゆっくり私たちの前へ。怪しいと思ったものの、懐中電灯しか持っていない女2人。問題ないと思ったのだろう、そのまま通り過ぎた。

他にも嫌な事件が起こる。
私が仕事の間、遠方からうちに来て捜索を手伝ってくれているSさんが、ちょっと路上に駐車した瞬間に駐車違反で、また電柱に貼り紙をしたところを現行犯で警察に呼び止められるということも。
私の為にしてもらったことで本当に申し訳なかった。

色々な事件が起こる中、龍馬の姿は全く見えないままだった。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

■関連記事
第17話 龍馬脱走事件 その13(Candy)
ペット保険を探そう!
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • Google+でシェア
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加