コラム

第14話 龍馬脱走事件 その10

龍馬(第1話第2話)の捜索11日目(経緯は第5話から第13話)。その間に配ったポスターチラシ400枚近く。目撃情報をくれる人も複数人いたが、時間が経過した後でその場に行っても龍馬には会えず、それが龍馬だったかどうかもわからない。
前夜自宅マンションと隣家との境目の塀にいた猫はおそらく龍馬だと思ったが(第13話)、戻ってこなかった。

じっと待っていることもできず近隣の捜索継続。通学路近くで小学生に「猫探してるんだけど」と言っただけで「りょうちゃんでしょ?」と言われるほど私も龍馬も町中の有名だ。
みんなが龍馬を知っている。それなのにどうして 私は龍馬に会えないんだ!!とイライラが募る。

脱走から12日目。龍馬を遠くに行かせないために自宅周辺に餌をまくので、いろんな野良猫が集まってくる。連日三毛猫がうろつくようになる。龍馬捜索の手伝いに来てくれている龍馬の譲渡主のSさんはこの三毛を捕まえて手術すると言う。三毛はまず間違いなくメス。避妊手術しなければほぼ確実に子供を生む。猫の繁殖力はすさまじい。1年で10倍に増える可能性もある。
龍馬の捜索中に捕獲器に入った野良猫は私が手術代を負担し不妊手術させることにしていたが(第7話)、その数がどんどん増えて正直負担になっていった。龍馬の捜索に専念したいのに、これ以上野良猫のケアが増えると、もう身もお金も持たないと野良猫捕獲には消極的になっていっていた。
それでもSさんはメスはどうしても捕まえて手術する、と言い手術代を分担してくれることもあった。
当時の私は、ありがたいと思いながらもなぜそこまでできるのか理解できなかった。それが今は私も手術代の出し手がいない場所の野良猫は全額自分で出してでも手術している。
実際に野良猫の過酷なニャン生をこの目で見、自分がやらなければ誰もやる人がいないという状況になれば、そうせざるを得ないのだ。なぜそこまで?という人は現実を充分知らないのだと思う。

その夜、ポスターを見た人から電話がかかってきた。龍馬の目撃情報ではないが、自分の猫も脱走し懸命に捜索したが、結局2駅向こうで亡くなって発見されたと。だから家猫は遠くまで行かないと思いこまず、2駅でも3駅でも自分の足で歩いて探してくれと。
ありがたい助言ではあったが、非常に落ち込んだ。
2駅3駅向こうまで四方八方歩いて探すなど不可能だと思った。でも見捨てるわけにはいかない。
Sさんに相談すると、2キロ移動した猫は聞いたころがあるが、龍馬は脱走後まだ2週間、遠方の捜索はもう少し後でも良いと言われほっとする。

13日目。仕掛けた捕獲器に白いオス猫がかかった。捕獲後パニックして暴れたらしく顔が傷だらけになっていた。この白猫の病院への搬送、手術は新たに手伝ってくれるようになったXさんというボランティア(第12話)に頼んだが、夕方まで時間とれないと言う。今考えたら私がタクシーで病院まで連れていってやればよかったのだが、当時は思いつきもせず、傷だらけの白猫を放置、龍馬を探しに行った。この猫は近隣のアレキサンダーという名前の野良猫だったことが後にわかり、自分がボランティアをするようになってから再会したので、アレキには謝っておいた。

XさんはSさんとは考え方が異なり、龍馬の居場所が分かってから捕獲器を設置せよという。居場所を突き止めるため、野良猫の餌やりをしている人を徹底的に探せと言うのだ。
必ず龍馬はどこかで食べているはず、自宅の庭先に餌を出しっぱなしにしている人も意外に多いのだと。ボランティアによりやり方が異なるが、協力してもらう限りはその時のその人のやり方に従うしかない。私は両方の助言をうまく使い分けるしかなかった。
近所で自宅で餌やりをしている人発見。Xさんは監視カメラを貸してくれた。動くものをセンサーが察知して自動的に撮影してくれる優れものだ。そこに龍馬が写っているか確認するのだ。毎日その家に2千枚ほどの撮影画面を確認しバッテリーの交換にいくことになる。
大きな期待をしたが、その家に食べに来ている10匹程度の猫の中に龍馬の姿はなかった。また大きく落胆。(写真)


もう2週間経っている。Xさんが言うように、どこかでご飯もらって元気でいるとは思えず、怪我でもしてどこかで動けなくなっているのではないかという思いで、体が疲れていて寝不足なのに朝4時に目が覚めて捜索へ。
仕事で重要な案件が入っていない日はできるだけ休みにしていた。その日も休みにしていたはずだった。空地を捜索していると「本日の件」という仕事のメールが入る。はっとして顔面蒼白になった。忘れていた、仕事を。あり得ない。約束の時間までに余裕があったので、泥だらけの顔を急いでふき、タクシーでかけつけ何とか事なきを得たが、仕事を忘れるなんてもう限界だと思った。
じゃあどうする、捜索やめるのか?答えは出ない。

娘も手伝ってくれてはいるが、部活と学校で娘も連日帰宅は夜中。脱走させたのは私の責任ではあるが、部活を休んで捜索をもっと手伝えと頼んだところ、娘も試験や部活の全国大会も近いのに無理だと言い、娘と喧嘩になった。どうするすべもなく私は、じゃあ、龍馬は死んだと思って見捨てるのか!と、とうとう子供の前で大きな声で号泣してしまった。私の精神状態は限界を超えていた。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

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