コラム

第13話 龍馬脱走事件 その9

1年半前に里親募集サイトで見つけ家族として迎え入れた龍馬(第1話第2話)が脱走して(第5話から第12話)8日目。いつものように早朝と夜の見回り、聞き込み、捕獲器確認と設置、ネット情報収集するも進展なし。

龍馬の譲渡主のSさんが、以前捕獲器に入った白い野良猫の手術を終えて放しにきた。
以前TNRの説明をしたが(第7話第8話)、捕まえて手術したら元の場所に戻すことが鉄則である。
別の場所に移動させたら、他の猫の縄張りであるから生きていけない。よく自分の家の周りに野良猫がいて困るから場所を移動させてほしいという猫嫌いの人がいるが、猫はテリトリーで生きている。その場所でないと生きていけない。生きていけないとわかっているところに移動させるのは遺棄罪に当たるそうだ。

この白ちゃん、3日前に捕まえたあとで、手術前に出産していたということが近所の人の話でわかったので、早く放して子供の授乳に戻さねばならない、それと同時にすべての猫が気になるベテランボランティアのSさんは、子猫は捕まえて里親探しをするから、その子猫の情報も収集してくれと頼まれる。
今の私ならもちろんすぐに賛同するのだが、当時はまだ自分が猫を飼い始めて数年、おまけについてきた凛子も含めて引き受けた(第3話)だけで自分としては精一杯のボランティアのつもりだったし、とにかく自分の猫が脱走して見つからないのに、他の猫のことまで気にする余裕はとてもなく、どんどん用事が増えていくのが負担になっていた。

Sさんがいる間に仕掛けた捕獲器にまた1匹かかったキジトラ。よく見ると、こいつ3回目だ。
普通は一度捕まったら二度と捕まらないのが野良猫だ。こんなに何回も入るのは、よほどの馬鹿か、よほどお腹空いているかだ。
こんなに何回も捕まる猫がいるということは、この辺には餌が足りないということだとSさん。龍馬も食べていないだろうから、お腹が空いたら必ず捕獲器に入る、捕獲器を減らすな、設置するのが大変なら、自分が私の留守に来て夕方設置して帰るからと。
Sさんの自宅はうちから遠い。車でも1時間かかる。非常に申し訳ないが、Sさんの助けなくては龍馬の捜索はできない。
この時の教訓を踏まえ、私が今、里親募集をする時は、うちから遠くないところに限定している。

Xさんというもう1人の近隣のボランティアさんにも加わってもらい(第11話)、ポスター、チラシはさらに距離を伸ばして貼ってもらってはいるが、Xさん自身たくさんの案件を抱えているらしく、連絡もすぐに取れないことも多く、私の焦りはつのるばかり。

9日目、もう1件目撃情報が入る。近所で朝犬の散歩の途中で龍馬に似たような子を見たと。
でも後でその場所に後で行ってももう姿は見えない。ポスター印刷100枚追加するも、その意味があるのかとも思い始める。

10日目 Sさんが自分の猫ボラ先輩だという85歳のお婆さんを連れてきて、うちの近所でどの辺に龍馬がいるか見てもらうという。長年の経験から勘が働くのか、その人は、龍馬は必ず近くにまだ居るから、姿を見なくても捕獲器はやめてはならないと言った。
その日の午後、近所で捕獲器を置かせてもらっているお宅から電話がかかる。捕獲器の中に先日放した白猫と一緒に子猫が入っていると。そこのお宅で産んで子育てしていたらしいが、その人は気づいていなかった。
捕獲器の餌につられて子猫が入ってしまい、慌てて親猫が追いかけ一緒に捕まってしまったのだろう。
こんな厳しい野良猫生活で出産をし、子供を守って育てていくなんて過酷だ。
絶対に産ませてはならないと思う。
またSさんに連絡して取りに来てもらう。懐かない親猫の白ちゃんは残念ながら外に放し、子猫は懐きやすいので里親探しをするのだそうだ。可愛い茶虎の子供だったが、生意気にシャーシャー威嚇していた。親から野良猫教育を受けてしまったのだろう。
親子を引き離すのは可哀想だが、野良猫として悲惨な生涯を送るのは1匹でも少ない方が良い。

その日の夜10時半、またいつものように周辺の捜索に出かけようとしたとき、うちのマンションと隣のブロックの境目の塀の上に、猫発見。暗くてはっきり見えないが、鈴の音がする。龍馬か?話しかけても全く無反応。パニックした様子もなく、さっさと塀の上を歩いて民家の庭に消えてしまった。人間は道路をぐるりと回らないと入れないところである。急いで回って行ったものの、もう姿も鈴の音もしなくなっていた。
臆病な龍馬とは思えない余裕の態度だった。帰りたがっているはずなのに、私の声に反応もしない。
空腹で死にそうなはずなのに。
あれは他の猫か?それとも龍馬か?近隣で首輪と鈴をつけている猫は他にいないはず。
自分の猫ながら、一体どういう性格なのかわからなくなった。
これでは目撃しても龍馬かどうか判断しようがないではないかと、ますます落胆していった。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

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