コラム

第134話 蓋を被ったフウタの間抜けな話 その2

私のネコライフは2011年に私が里親として龍馬を迎えたところから始まった(第1話から第3話)。ところがその龍馬を脱走させてしまい、地獄の捜索体験(第5話から第22話)をした際に、野良猫の不妊去勢手術にかかわったことや、可哀想な猫を沢山見てしまったことがきっかけで、猫救済ボランティアを始めることとなってしまったのだった。(第23話から第133話)。

時は進んで2016年の夏。イチゴさんという餌やりさんが通っている猫道(第28話)で、何やら奇妙なものが首に巻き付いている猫を発見。それが何かの蓋のようなものであったのでフウタと名付けた。その前の年に一度見かけてから暫く遭遇できなかったので心配していたのだが、9か月も経過してこの猫道に現れたのだった、しかも蓋を付けたまま!SNSでの助言でその蓋がプラスチック製のじょうろの蓋であろうと推測された(第132話)。

133_1何とかフウタを捕まえてその蓋を外してやりたいと捕獲作戦を練り始めた。フウタは耳カットがしてあるので、既に一度は捕獲されて去勢手術をされているということだ、すなわち捕獲器の怖さを知っている。一度捕まった猫は二度と捕獲器には入らないと言われている。特にフウタは警戒心強く、餌場でも広い空間には出てこない。いつも藪の中やフェンスの向こう側にいて餌をもらっている。餌やりのイチゴさんですら近づけないと言う。

まずはフウタに私を信頼してもらい、近付いてきてもらわなければならない。猫と仲良くなるには食べ物が一番。私がしばらく餌場に御馳走をもって通うことにした。多忙な中、その時間を捻出するのが最大の難問だった。

暫く私が出前に通う日々。すると、見慣れないおばさんが御馳走を持ってくるのを見て、何やら不気味に思ったのか、またフウタは暫く姿を見せなくなってしまった。
うーん、どこかほかの場所でご飯をもらっているのかも。捕獲するときの基本はとにかく餌やりのコントロールがカギだ。怪しい檻に入る決断は、用心深い猫にとってはよほどの事。他に安全に食べられる食堂があるのに、敢えて不気味な檻の中に入って食べてやろうなどと思う猫はいない。特にフウタは一度捕まった経験があるのだから、よほどお腹が空かないと、危険を冒してまで怪しい檻には入らない。それでも、餌をコントロールすることで、手を焼いた猫がすんなり捕まることもあるのだ。
生き物にとっては食べ物が最大の弱み。食べられないと生きていけない。人間の歴史に見ても、しばしば戦の戦略に兵糧攻めが使われるのも納得だ。

捕獲の問題さえなければ、猫達がひょいと立ち寄れるスポンサーが複数いて、お腹を満たしてもらえるのはとても良いことであるが、捕獲するとなると、何はさておいても兵糧攻めしか手はないのだから、周辺の全ての餌やりに餌をストップしてもらわねばならない。こんな当たり前のことがとても難しい。なぜならば、多くの餌やりさんが、残念ながら、避妊去勢手術などに協力をしないで、餌だけやってあとは知らん顔のいわゆる無責任餌やり、あるいは、近所に批判されるのを恐れ、自宅の庭の隅でこっそりやっている隠れ餌やりなのだ。制御できない。近所の人にとっても、私達ボランティアにとっても迷惑な存在である。餌をやる事が悪いのではない。猫だって食べなければ生きられない。餌やりを禁じる法律はないし、禁じることは猫に餓死しろということになるので、動物愛護法とも矛盾するし、大半の行政は餌やりを禁止していない。しかし、猫が安全に人間社会で共存していけるようにするには、無責任な餌やりで近隣に迷惑をかけ、その結果猫が嫌われるようなことになってはいけないのだ。餌やりをするなら、片付けや避妊去勢手術とセットでやることが必要である。

話をフウタに戻そう。なかなか周囲の餌やりを見つけることができず、餌をストップできないでいたので、私が捕獲器を持って餌場に近づくとフウタは姿を見せないということが続いていた。もう長いこと首に異物をぶら下げてストレスにならないだろうか。蓋が邪魔になってご飯食べられないということは無いのだろうか。何かにひっかかって窒息しないだろうかと心配でたまらない。

その話をSNSにアップしたところ、猫ボラ界では有名な捕獲のプロと言われている人につながり、丁度この辺りに別件で来ることがあるので、フウタの現場に寄って捕獲を試みてくれると言って下さった。 
毎日あちこちから相談を受け走り回っておられ、また福島にも定期的に通っておられる尊い団体の方で、私はSNSでしか知らないが、猫がらみで何度か助けてもらったことがあり、尊敬している方だ。
しかし、フウタが必ず出てくるとも限らないのに無駄足させても…と躊躇したが、そんなこと気にしなくてよいと、来てくださった。

お二人で約束の時間より早めにいらして周りをリサーチ。餌の時間になり、餌やりのイチゴさんが登場すると、猫達がワラワラと集合。そこにフウタの姿は無かった。あぁ、お願い、遠くから駆けつけてくださった忙しい方々に無駄足させないでー、出てこいフウタ!と思い、周囲を回ってみると、猫道の裏手にフウタと仲良しのパンダがいた。きっとフウタも近くに一緒にいるに違いない。しかし姿を見せない。
そのうちに遠くからドーンと言う音が!猫達はびっくりして隠れてしまった。一体なんだろうと思えば、運の悪いことにその日に限って、近くの川沿いで花火大会だった!
これじゃあ捕獲は無理だぁ。しばらく頑張ったものの、その日にフウタには遭遇できず、駆けつけてくださった方々には申し訳なかった。

また最初からだ。その餌場にフウタが現れるようになったら連絡してね、と餌やりのイチゴさんと、よく猫と遊びに来るお兄さんのSさんに頼んでおいた。
しばらくして、そのSさんからメールで、フウタが現れた!と。柵から広い空間に出てきて食べていると。まだ蓋を付けたままだけど、それでちゃんとご飯食べている姿が見られて安心した。

133_2さて、それでもこのままで良いわけない。どうしても捕まえねば。 
フウタは毎日来るわけではないし、来たときでも、私が近づくとすぐ逃げる。相変わらずあちこちでご飯をもらっているようでので兵糧攻めも難しい。

考えあぐねていると、またしばらくして、Sさんからメールが。
何とフウタの蓋が取れていると!

133_3一体どうやってとれたのか全く謎だが、とにかく良かった!!拍子抜けするようなエンディングだった。

しかし、外猫生活がいかに危険かということを改めて伝えたい。交通事故や虐待だけではない、じょうろに首を突っ込まねばならないほど、水すら簡単に飲めない。挙句はじょうろの蓋に巻き付かれ、不自由な日々を送ることになる。
野良猫ののどかな写真集に惑わされないでほしい。いつもあんな平和でのどかな毎日を送っているわけではない。外で暮らすのは危険と隣り合わせなのだ。飼い猫を外に出入り自由にするのはもっての外であると同時に、人間に捨てられた挙句、外で暮らさねばならなくなった野良猫たちに是非とも慈悲の心を向けてやってほしい。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

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