コラム

第132話 幸運なシンデレラボーイひかる不運との闘い⑦ 譲渡主の責任

このコラムは、私が里親として迎えた龍馬(第1話から第3話)を脱走させてしまい、地獄の捜索体験(第5話から第22話)をした際に、野良猫の不妊去勢手術にかかわったことや、可哀想な猫を沢山見てしまったことがきっかけで始めることになった猫救済ボランティアの体験記である。

2016年のこと。6月に保護されてすぐに素晴らしい里親さんに出会えた幸運なひかる(第126話から)が、譲渡から3ヵ月後に里親さんが気軽に受診させてくださった健康診断にて、白血病陽性というまさかの診断が出てしまった。エイズ白血病ウイルスにも潜伏期間があり、たまたまひかるは不幸にして保護する直前に白血病に感染、保護してすぐの検査では潜伏期間だったために陰性と出てしまい、陽性であったことを知らずに譲渡してしまったからであった(第127話から第131話)。

正直、私はひかると後に譲渡していた2匹目の礼も里親さんから返されてきたらどうしようかとドキドキだった。うちでは到底隔離もできないし、充分なケアもしてやれない。 しかし、有難い里親さんは2匹目の礼には白血病ワクチンを接種し、2匹共しっかりと最期まで責任もってみてくださると言ってくださり、私は感謝の気持ちで一杯だった。
最初に出会った時から、このご夫婦なら何があっても信頼して託せると思ったが、それを地でいく形となってしまい、申し訳なくもあり有難くもあった。

これで良かった、めでたしめでたし、で終わってはならない。ひかるの譲渡主として第130話で書いたような様々な余波に対応せねばならなかった。

まずは、それまでに里子に出した猫達の里親さん全員に、ひかるの事件について、そしてひかる以外の猫についても同様に、保護直後一度しかエイズ白血病検査をしていないこと、しておいた方が良い事を伝えた。大半の里親さんが、そのメールを読んで、ひかるへのお見舞いの言葉と、至急再検査します、と言って下さった。
中でも、愛ちゃんという数日間だけひかると一緒にいた事のある猫の里親さんはショックを受けられたようだった。
他数匹の里親さんは、恐らく大丈夫だろうと思われたのだろう、その時は返事がなかったが、当時は既に猫は私のものではなく、私からは必要な情報を提供した上で、決断するのは里親さんだと思っていたので、それ以上私は追求しなかった。(今は猫の命に関わる重要な助言は譲渡後でも聞いて頂く事を契約書に盛り込んでいる)。しかし、その後、その里親さんたちが、次の猫を私から迎える検討をされるという事があり、その段階では、先住の陰性が確実なものでなければ次の猫に危険が及ぶため、再検査をお願いした。これで全ての里親さんが再検査をして下さった事になり、結果は全て陰性だった。
本来は2匹目に感染させないために検査が必要なのではなく、その猫自体が本当に陽性ではないかを知ることが大切である。陽性であることを知っていれば、発症させないように対処の仕様もあるが、知らなければ発症してから気付くことになり、手遅れになるからだ。

そして一番心配だったのはうちの猫達だった。ひかるは他の猫とはあまり絡まなかったが、チュールタイムには皆に混じって集まりに参加。一つのチュールをみんなに交代で舐めさせてしまっていた。エイズと違って白血病は唾液でも感染する。私は当時うちにいた子達6匹を全頭再検査させ、皆陰性が確認された。

とりあえず心配な猫達は全頭陰性がわかり安心したものの、まだそれで終われない。譲渡主の責任として、私はまだ何でこんなことになったのか、解明せねばならなかった。知っていて当たり前だったのか、他のボランティアは知っているのか、みな潜伏期間過ぎてから再検査しているのか、いつ検査したかが譲渡会に参加するに聞かれないのは何故か、どうしてそれまで誰も私にそんなことを教えてくれなかったのか、これまで私が飼い主としてもボランティアとしても関わった獣医師の先生も、検査した時に何も言ってくれなかったのは何故なのか、私が里親として迎えた龍馬や凛子も2回検査していたのか、今回、私が保護主として何をどうすべきだったのか、どれだけ私の行為が無責任だったのか突き詰めなければ気がすまなかった。  

まず当時私が関わっていた周囲のボランティアの人に聞いてみたが、誰も潜伏期間のことを知らなかった。子猫はまた別の事情があるので別議論とする(詳しくは第123話参照)が、大人猫については、みな保護してすぐに検査し、その1回で陰性と表示して里親募集しているようだった。譲渡会の参加条件に、エイズ白血病検査は潜伏期間を過ぎてからという条件にもなっているところを見たことはなかった。また、私が飼い主としてうちの猫を検査に連れて行った病院でも、陰性という判定を告げられただけで、潜伏期間後にもう一度検査した方が良いとは言われなかった。
私が里親として迎えた龍馬や凛子も、譲渡主のSさんに電話して、検査2回してあるのか聞いてみたところ、1回だけだとのことだった。Sさんは相当数の譲渡をしているがそれでも1回のままということは、実は陽性だったというケースに当たっていないということなのだろう。つまり、ひかるのケースは相当稀であったということなのだろう。ほとんどのボランティアも動物病院も、ひかるのように後になってやはり陽性でした、ということは経験されていないのであろう。ということは、ひかるの里親さんが健康診断うけさせた病院の先生は、そのような事例を知っておられ、再検査を勧めてくださったのだろう。有難い話だ。それがなければいまだにひかるは陽性であることを誰も知らずにいて、発症して初めてわかり手遅れになっていたかもしれないのだ。
そして、ひかるの検査を最初にしてくれたいつもお世話になっている先生は、「本当は1カ月待ってから検査した方がいいんですが、皆そこまで待てなくて急いでしてしまうんでしょうね。」と言われた。この先生は、おそらく保護譲渡の活動をしている私が、潜伏期間のことを知らないと思われなかったのであろう。検査結果証明書にもよく見たら、下に小さい字で「これは検査当日の結果です」と書いてあった。しかしこの先生もそれ以来、新米ボランティアが検査に来たときは、この事例を話して再検査を勧めておられるようだ。

その数年のちにシェルターを運営している人と話したことがあったが、私が話したシェルター2か所では、猫をシェルターで預かる際の条件に、白血病検査が潜伏期間を過ぎてから陰性の猫に限るとなっていた。

シェルター以外の人は殆ど知らないか、あるいは滅多にないケースであるので、そのリスクを意識していないというのが実情の様だった。だからと言って、私が知らずにひかるを譲渡してしまい、里親さんを悲しませてしまったこと、2匹目の礼にリスクを負わせてしまったことを正当化できるわけではない。今私ができることは、二度と同じことが起きないよう、広くこの事実を広めて行く事である。 
それ以来、私のすべての保護猫には、潜伏期間の1カ月はほかの猫と接触させてないで隔離し、その後に検査をしている。それ以前に里親募集を始める場合には、保護してすぐと1カ月後に再検査をしている。そしてその里親さんに先住猫がいた場合は、再検査をお願いしているが、全員受け入れてくださった。そして他の全ての保護主にもこの事例を話している。二度と同じ悲劇がくりかえされないように。

ひかるの里親さんには心から申し訳ないことをしたと思っている。しかし、正直言って、あのご夫婦でなければ、陽性とわかったひかると礼まで受け入れ、幸せにしてやることはできなかったと思う。あれから3年ひかるは発症せず元気一杯だ。あの里親さんだからこそだ。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:
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