コラム

第11話 龍馬脱走事件 その7

里子に迎えた龍馬(第1話第2話)の脱走5日目に(経緯は第5話第6話第7話第8話第9話第10話)、潜んでいると思われた場所から移動しているところを目撃したと近所の人から聞きショックを受ける(第10話)。移動してしまえばマンション敷地外に出て行ってしまう。移動してしまった原因はベランダに帰れるようにスロープをつけようと材木屋を呼んで工事してしまった私の失策だった。(第9話

夜10時半、外に出てみると、移動先と思われる繁みの中から黒い物体が飛び出してきた。そして鈴の音。
え?りょうちゃん?声をかけたもののその黒い物体は振り返りもせずに猛ダッシュ。少し先の木の茂みに隠れてしまった。藪の中をかき分け、深夜まで粘ってみたが、呼んでも反応もなく、鈴の音すら聞こえなかった。
やだ、母さんを忘れた?それとも龍馬じゃないの?
龍馬と思われる猫が私の声に振り返ってもくれなかったことに私はさらにショックを受けた。
龍馬の譲渡主のSさん(第1話)に相談してみたが、パニックした猫は飼い主を見つけても無視して隠れてしまうものらしい。

翌朝4時に目が覚め、周囲に設置した捕獲器を確認するも入っていない。
そもそも龍馬は一番最初にSさんが外で保護した時に捕獲器で捕まっているから、その時の記憶があり、よほど空腹にならないと入らないらしい。
もう6日である。空腹のはずだ。
周囲に置いた餌はいつもなくなっているが、龍馬が食べているのかどうかはわからない。この周辺にはここを縄張りとする猫達がいるので、新参者の龍馬がその餌を食べようものなら半殺しにされる。野良猫の世界は厳しいのだ。特に龍馬は去勢しているので、喧嘩には弱い。未去勢のオス猫が近所にいたら、龍馬は喧嘩に負け餌は食べられない。そのためにもボス猫が残すほどの多めの餌を置かなければならない。未手術の野良猫が捕獲器に入れば、不妊手術に連れていくので協力をするようSさんには頼まれていた(第7話)。そうすれば、不幸な命を増やさないことにもなるし、ボス猫もおとなしくなり、龍馬が追われて遠くへ行ってしまうことはなくなる。しかし、そうしてお腹が満たされれば、龍馬は捕獲器には入らない。ジレンマだ。

200枚配ったチラシ、ポスターの効果はまだない。目撃情報は上記1件のみ。
仕事も手につかなくなり、私が探せない時間に動いてくれる人を雇うことを考え始める。Sさんも遠くから何度も手伝いに来てくれているが、それでも足りないのだ。
便利屋でも探偵でも誰でもいい、私が仕事している時間、睡眠とっている時間に、誰かがどこかで動いていてくれれば少しは気持ちが救われる。
Sさんから動物探偵を紹介してもらうも、その人は人気者で先まで予約一杯だった。Sさんの話では、捕獲は探偵よりボランティアの方がうまいが、情報量は探偵の方が優れているとか。
藁をもすがる思いで、ネットで調べた動物探偵事務所に電話し依頼することにした。

すぐに担当者をつれて探偵社の社長が自宅にやってきた。話してみると、昼間しか捜索しない方針であると言う。深夜こそ私に代わって捜索してほしいものだが、深夜に探偵が捜索しても近隣の住宅には入れてもらえないし、怪しまれて時には警察から職務質問されたりで、効率よく捜索できないらしい。うーん、納得できるようなできないような。
探偵を使うメリットはポスター作製力だと言う。私が作ったものではだめで、子供でも関心を持ってくれるようなポスターでないと、と。それを数百枚作製し、一晩で現場から数百メートル四方に貼り付け、配布し、それを基に目撃情報収集し24時間体制で電話対応すると。そして猫が見たことないようなオリジナルの捕獲器で捕獲すると。持ってきてくれた真っ黒い大きなドラム缶でのような異様な捕獲器は、こんなものが原っぱに置いてあったら、猫じゃなくても子供が喜んで戦争ごっこに使いそうなものだった。

正直、安い金額ではないし、1週間ごとに延長可のシステムだったので、いくらでも無限大に膨みそうな気がして躊躇はしたが、他にすがれる手段はなく、契約書にサインをし、ポスター制作と最初の1週間の捜索費用を支払った。
まずはメールで特徴的な写真を送ることに。顔よりシルエット、特にしっぽが大事だとか。長い鍵しっぽが特徴の龍馬のしっぽの先まできちんと写っている写真がなかったので、探偵にはうまく手を加えてそれらしく見せてもらうことにした。
すぐにポスターのドラフトは送られて来たが、手を加えたしっぽがカッターナイフで切り取られていたような形になっており、しかも緑の首輪をしている写真を送ったのに、先方のプリンターのせいとかで、首輪が黄色に光っている。とても龍馬には見えないし、首輪の色が違ったらポスターの意味はないではないか。やり直してもらおうと、社長の携帯番号、および事務所に電話したものの出ない。折り返しもない。
数時間後に折り返しかけてきた社長は、「ちょっと具合悪くてさあ、病院で検査を受けてたんだよ。」と言い訳。24時間電話を受けるという契約でありながら、そんなことがこんなビジネスの言い訳になるのかと私は激怒した。至急ポスターのやり直しを求めるも、この社長こともあろうに「いやだ、こんなに文句を言う人は。こういううるさい人はあとでもめることが多いんだ。そんなの嫌だから降りる。お金返す。」
は?私は言葉を失った。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

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