コラム

第113話 骨肉腫珠子の悲しい生涯 その4 診断結果に複雑な心境

子供の頃から猫好きで、よく野良猫を拾ってきては親に叱られていた私は、遂に自分が里親として龍馬と凜子を迎えるに至ったのが2011年。そこから楽しく猫との生活を送るはずだったが(第1話第2話第3話)、その後しばらくして、自分の不注意で龍馬を脱走させてしまい(第5話から第22話)、その捜索中に沢山の野良猫に出会い、悲惨な現実を知ってしまった事をきっかけに、ボランティア活動を始めることになった(第23話から第112話)。主な活動は野良猫の不妊去勢手術、子猫や人馴れした成猫の保護、譲渡、具合の悪い猫への投薬、入院治療など。 その中で様々な事件に遭遇するのだった。 

時は2016年3月。猫道と呼ばれている猫のたまり場(第28話)で、具合の悪そうな猫がいると餌やりのイチゴさん(第29話)から連絡あり。行ってみると、胸元に大きなテニスボール状の腫瘍を抱えているように見えた猫が。珠子と名付ける(第110話)。そこから3か月悩んだ挙句、同年6月のかなり暑くなってきた頃、それ以上放置したら炎天下干からびた亡骸を発見することになるような気がして、覚悟を決めて保護して病院に連れて行く事に(第111話)。珠子はもう素早く動けなくなってしまっているのに、捕獲は難航したが何とか捕まえ病院へ入院させた(第112話)。

病院で検査を受け、診断を待つ。その間、今後の展開をあれこれ予想する。第111話で説明したように、治療後に万一退院してきても自宅で飼ってやれるわけではない。永遠に病院に置いてもらうわけにもいかない。万一手術が必要になったとして、それがどんなに高額でも問題なく払える財力をもっているわけでもない。人馴れしてもいないし、今後するかどうかもわからない。人間との暮らしが珠子にとって幸せなことかどうかもわからない。私が珠子のためにしてやれる事が本当にあるのかないのか定かではない中で、3か月迷った私の前に珠子はまだ現れる、その間誰も珠子に救いの手をさしのべていない、ということは、珠子は私に救われたくて私の前に現れたのだろう、私が救う運命か、私に救える力があるか、なんだかわからないが、私に対応できるはずという根拠のない賭けに出ただけだった私は、診断を待ちながら実は不安で一杯だった。

しばらくして先生から、骨肉腫か胸骨腫のどちらかでしょうとの診断が。どちらなのかは更に詳しい検査が必要と。しかし、手術は腫瘍の場所からいって不可能。このまま1カ月単位で経過を見ていくしかないでしょうと。つまり、助からないということだった。余命2,3か月ですか、と私はぶっちゃけ先生に聞いてみた。先生はおそらくそのくらいだろうと。長くまともに食べられていなかった珠子は骨と皮。大人猫なのに体重が2.1キロしかなかった。

この診断を聞いて私は、迷わずもっと早く保護してやらなかった事を珠子に詫びた。余命ほんのわずかになるまで放置してしまい、長い間痛みや苦しみを我慢させてしまった。そして同時に、ほっとする自分もいた。この診断により、数カ月入院させ、苦痛を和らげ看取ってやるというシナリオしかないということが確定したのだ。私が何も選択することなく、残った選択肢が私にも対応できそうなものだったのだ。あぁ、やはり私との出会いは運命だったか、私にも救えるケースだった、保護してよかったのだ。万が一にも、手術、抗がん剤すれば助かる、でも何十万もかかると言われたら?手術後退院でき、自宅で面倒見なくてはいけなくなったら?そんなシナリオでは私には無理だったのだ。

113珠子が余命宣告を受け、手術せず、短期間入院して苦痛を和らげてもらい、穏やかに看取ってもらうというシナリオになってしまったということは、珠子は助からないのだから悲しいことではあるが、そうでなければ、私は珠子を余計苦しめることになっていたであろう。その悲しいシナリオの終わりを想像しながら、胸の痛みと同時にほっとした。

猫ボランティアをしながら色んな事件に遭遇してよく思うことは、この活動は、ただ単に野良猫を見ればすべて拾い上げ、自分の能力とキャパシティを考えずやみくもに保護して自宅に連れて帰ればよいというものではない。どう生まれ、どう生きて、どう医療を受けて、どう死んでいくのかということまで猫の生涯全体を通して、その猫の福祉と幸せを考えてやらねばならないのだ。命を救ってやっても、人馴れしていない猫を生涯小さなケージに押し込めて人間の空間に置いておくことは生きている間の猫の福祉にならない。その子にとってどう生きるのがベストなのかを考えてやらねばならない。それとは逆に、怪我や病気で苦しむ野良猫を見ても、保護して病院に運んでどうせ助からないから放置しておくと割り切る人が猫好きの中にもいるが、それも私は違うと思う。亡くなるにしても、苦しんでいる猫が、台風の中、泥だらけになって息絶えたり、炎天下干からびで亡くなったりするのは余りに不憫だ。そして腐乱死体になって発見されたり、亡骸が何度も車に轢かれたりするのを想像するだけでも鳥肌が立つ。死ぬところまで含めて救ってやりたいと思うのだ。人間だってそうだろう。死にそうな人をどうせ助からないからと言って、苦しんでいるのを放置しないだろう。そして亡くなったら簡単な供養位はしてやりたいと私は思う。病院に入れるのはストレスになるという人もいるが、私の考えでは、少しでもせめて雨露しのげる場所で、最後に人の温かみを感じてほしいと勝手に思ったりする。人間を恐れる猫なら、そんなものいらない、というかもしれないが、せめて痛み止めや補液などで苦痛和らいだら、感謝はしてくれるはずだと思っている。

先生との相談において、私はとにかく、ただただ苦しみを取り除くことを最優先にお願いした。骨の癌なんて恐らく痛いだろう。私だって末期がんになったら、モルヒネをガンガンに打ってほしい。延命など絶対いやだ。だから、珠子にも痛み止めだけは、いくらかかろうと、遠慮なく打ってやってほしいと先生にお願いした。痛みを和らげ、少しでもおいしいものを食べられるようになって、少しでも生かされてよかったと思ってほしい。
ほっとした気持ちと、珠子への謝罪とで心が乱れ、病院から家路につくと涙が止まらなかった。
しかし、実際には予想外の展開となったのだった。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
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