コラム

第110話 骨肉腫珠子の悲しい生涯 その1 決断できない苦しみ

私も単なる猫好きで、2011年2月に龍馬と凜子の里親になったところからすべては始まった(第1話第2話第3話)。その後しばらくして、自分の不注意で龍馬を脱走させてしまい(第5話から第22話)、その捜索中に沢山の野良猫に出会い、悲惨な現実を知ってしまった事をきっかけに、ボランティア活動を始めることになった(第23話から第109話)。主な活動は野良猫の避妊去勢手術、子猫や人馴れした成猫の保護、譲渡、具合の悪い猫への投薬、治療など。その中で遭遇した様々な事件を書き綴っている。

脱走した龍馬が見つかってから半年後の2013年11月、近隣の猫道と呼ばれる猫のたまり場で猫の大群を見つけ(第28話から)、10匹以上の猫のTNR(飼い主のいない猫に不妊去勢手術をして元の場所に戻すこと)、5匹保護(うち譲渡2匹、3匹はうちの子に)してから2年半経過した2016年6月までのボランティア活動記録を書き綴って既に110話。2年半でそんなに書くネタがあったのかと自分でも驚くが、2018年7月の今日現在までに、その時点から更に2年分のネタが溜まっている。いかに猫にまつわる事件が多いか、つまり、いかに不幸な猫が巷に溢れているかということだ。猫好きの方には自分の猫を可愛がるだけでなく、飼い主に恵まれない不幸な猫達にも思いをはせ、自分にできることを考えてほしい。自分に何ができるかわからない方、このコラムのいたるところにヒントがあるはず。私だってつい数年前までは単なる猫好きの飼い主だったのだから。私にもできることは誰にでもできるはず。

さて時系列で書き続っている猫ボラ奮闘記の続き(第108話)に戻ろう。時は2016年3月。前述の猫道(第28話)の餌場で具合の悪そうな猫がいると餌やりのイチゴさん(第29話)から連絡あり。この猫道には私が不妊去勢手術を続けてきた結果、手術済みの猫約10匹が一代限りの命を全うすべく、ここで餌をもらっている。不妊去勢手術をしてあるので、子猫はそれ以来一度も生まれていないが、成猫はどこかから移動して来たり、ここに餌があるということで捨てられていく猫もいるのだろう。時々新顔が現れる。イチゴさんが連絡してきた猫は耳カットがあった。私が捕まえて手術した猫ではなかったので、どこかで誰かにTNRされ、猫道に流れ着いたのであろう。イチゴさんによると、その猫はあまり動かないし、食欲もなく、具合が悪いようだと。見に行ってみると、目ヤニもすごいし、風邪を引いているか、歯周病か口内炎が進行して痛みで食べられなくなった可能性が高い。とにかく外の猫にとっては、食べることしか楽しみはないのだ。外猫の平均寿命は3年とも言われる。短い生涯、せめて最期までおいしく食べてほしいので、具合の悪そうな猫を見かけたときは、症状と写真をもっていつもお世話になっている獣医さんに薬をもらい、それを餌やりさんに渡して餌にまぜて飲ませてもらう。

第110話 骨肉腫珠子の悲しい生涯 その1 決断できない苦しみしかしこの猫、最初は動かなかったので気が付かなかったが、移動した時に、大きなテニスボールのような腫れが胸元にあったのが見えた。猫歴短い私は、そんな症状を見たことがなかったが、猫に詳しい人によると、腫瘍ができているのではないかと。その症状を見て、私はその猫を珠子と呼ぶことにした。大きな玉のような腫瘍を抱えていたので。

それまでの私は、病気の猫に遭遇することは滅多になかったが、遂に来たか!と寒気がした。仕事や遠距離介護で留守が多い私には、重症の猫をうちで保護して面倒見ることはできない。一体どうしてやれるのか、全く案がなかった。
少し前にパンジー公園のフワフワ猫が交通事故で半身不随になりかけていた時も、どうしてやれるのか迷いに迷ったことがあった(第80話から第81話)。手術代もさることながら、命とりとめて半身不随で退院してきたら、私にはどうにもできないことがわかっていたからだ。でも、どうしても見捨てられず、とにかく手術をしてやってくれとドクターにお願いしたことがあった。その後のことは手術してみてから考えようと、ある意味無謀な決断をした。しかし、その時は、手術の準備をしている間にフワフワは亡くなってしまった(第81話)おそらくそれは私には無理、救ってやれない運命だったのではないかと思った。半身不随猫を保護している人の体験談を聞くと、猫が自分で排泄できなくなってしまっていたら定期的に絞り出してやらねばならないのだ。留守が多い私にはどうしても無理だった。それでフワフワ自ら、私が手術をしてやろうと決断した段階で、もういいよ、ありがとう、と遠慮して逝ってしまったのだと思った。

さて珠子はどうすべきか、悩みに悩んだ。しばらくは薬を餌やりさんに渡して飲ませれば、また食欲を回復していた。それを何度か繰り返すうちに、どんどん珠子は痩せてきた。このまま症状が悪化したら、周囲の植え込みの中で動けなくなるだろう。そのまま真夏になり過酷な季節になる。炎天下で干からびて苦しみながら亡くなるなど想像するだけでも耐えられない。

しかし、一旦手を出して保護して病院に連れて行ったら、何があっても最期まで面倒みてやる覚悟が必要だ。この子がもう先が長くないという診断になれば、猫には可哀想だが、私にもできることはある。自宅で看病しながら看取ってやれなくても、短い命ならば病院に預かりをお願いできるので、入院治療費を工面すればよいのだ。簡単ではないが、支援を集めるなりできることはある。しかし、問題は、この子が長期に渡り入院、治療や手術の末、今後まだ命を長らえることができるという結果になったら、私には対応できないのだ。治療が必要なくなっても長年入院させることはできない。ケージの中で何年も生きていくのは、猫にとってストレスになるからだ。保護して里親募集など、病気持ちで見た目もお世辞に可愛いとは言えない珠子を迎えてくれる人はいないだろう。
私がうちに連れて帰ることはできない以上、この子の余命がいくばくもないと確認できない限り、手を出せない厳しいケースとなった。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:大田区の虎徹 コテツちゃん

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