コラム

第10話 龍馬脱走事件 その6

里子に迎えた龍馬(第1話第2話)が脱走して(第5話第6話第7話第8話第9話)3日目に、龍馬が飛び降りたマンションの2階のベランダに自力で帰って来れるよう、材木屋を呼んでスロープを作ってもらい(第9話)、ベランダに匂いの強い焼き魚やフードを置き、そこにも捕獲器を設置して奇跡を待った。

ベランダから家族が龍馬の名前を呼ぶと共に、仲良し猫の凛子(第3話)の鳴き声を聞かせるべく、小ケージに凛子を入れベランダに出して鳴かせた。叩いて鳴かせてみたりした。悪い、凛子、龍馬のためだ、我慢して!猫は聴覚と嗅覚は鋭いらしい。発情した雌猫の鳴き声を聞いた雄猫は2キロ先でも聞きつけてやってくると聞いたことがある。凛子は何で私が外に出されるのさ、と仲良しの龍馬の一大事にも付き合い悪い。2匹とも避妊去勢手術済みなので発情はないだろうが、気持ちの情はあるだろう、と期待してみる。この作戦はあとで周囲に失笑を買う。

翌日、脱走から4日目の早朝、いつものように近所での捜索。早朝のジョギング族や犬の散歩の人への聞き込みと、野良猫の餌やりさんを探すことも有益だと聞いた。餌やりさんは近所の野良猫のことをよく知っている。警戒心の強い龍馬が知らない人間に姿を見せるとは思えないが、念のため確認を。
毎朝5時に餌をやっている90歳のお婆さんに巡り合えた。確かにいるわ、いるわ、このお婆さんの家の玄関で行列を作って朝食を待っている猫軍団が。猫には特有の腹時計があるという。毎日同じ時間に餌場で猫は待っているのだそうだ。餌やりさんの顔も覚えていてぞろぞろついて歩く。私はこの町にこんなにも野良猫がいたのかと驚く。お婆さんに龍馬の写真を見せると、見たことがないと言う。がっがりして仕事へ向かう。

夕方、龍馬の譲渡主の猫ボランティアのSさん(第1話)が捕獲器を追加で2台持ってきてくれ、近所の一戸建ての家に捕獲器を置かせてくれるよう頼んでくれる。近所づきあいをしていない私は誰にも助けを求められなかったが、Sさん曰く、野良猫には冷たい人は多いが、飼い猫の脱走には皆協力的なんだそう。確かに、皆、遠慮しないで自由に庭に出入りしてよいと言ってくれた。
私は捜索初日に、一番龍馬が潜んでいる可能性が高い場所で、しかも一番協力してくれるはずだと思っていた知り合いのマンション1階の住人に、捜索の声がうるさく夜10時に打ち切れと言われた(第9話)ことが相当ショックで萎縮してしまったが、やはり遠慮して長引かせるより早急に探し出すことの方が迷惑は少ないと思い直した。何と言われようと見つかるか死体が上がるまでは捜索をやめるわけにはいかないのだから。

Sさんの助言もあり、1階のベランダの中の室外機の下を確認したい旨お願いする。すると、何と数日前にベランダの室外機の上に、緑の首輪をした猫を見かけたというのだ。室外機の上に座って中を覗いていたと。ああ、龍馬、帰りたかったんだろう。外の日々が辛くて中に入りたいと思ったに違いない。その人にどうしてすぐに電話くれなかったのかと怒りたい気持ちを抑え、私はその場所を確認したいとお願いした。
この人は猫が嫌いらしく、自分で覗いてみてはくれない。そこに猫がいたら怖いのだとか。自分でどうぞと言われたたが、部屋からは入れてもらえず、外から塀を乗り越え、踏み台を持ってきてベランダを乗り越え室外機の下をのぞく。当然もういない。そこにもせめて捕獲器を置かせてもらうことにした。毎朝晩、塀を乗り越えて、捕獲器の中の確認をする。これを含めてマンション内外に捕獲器5台、毎朝晩の設置、確認、消毒はきつかった。

夕方設置した1台に白猫1匹がすぐ捕まった。龍馬でないことにがっかりしながら、ボランティアのSさんに連絡し、不妊手術につれていってもらう(第7話)。その子を病院に搬送したあとで、近所の人にその猫が最近子供を産んでいるらしいと聞く。Sさんは授乳中の母親を連れて行ったら子猫が餓死してしまうと心配。子猫の鳴き声がしないか探してくれと言われる。確かに心配だけど、当時の私はまだ龍馬を探す以外に用事が増えるのは正直しんどかった。

収穫ないまま5日目。朝昼夜、すべての時間帯に聞き込みに。自宅マンション前で、近所のおじさんに、首輪した猫を数日前に見かけたと言われる。潜んでいるだろうと思っていたマンション内の藪の中から飛び出して、駐車場を通り越して数メートル離れた藪の中に移動したと。そこもまだマンション内だが、そっち側に行ってしまうと一軒家が並ぶ隣のブロックにつながっているのでマンションを出てしまうかもしれない。
「この辺は野良猫多いから普段は気にも留めないんだけど、野良猫とは雰囲気違う品の良い猫で、首輪付けてたから覚えてるんだ。」とおじさん。
数日前に移動したと言われハッと気づいた。材木屋さんに来てもらってベランダにはスロープを設置してもらった日だ。龍馬はやっぱりまだそこに潜んでいたのに、知らない男の人が来て、大きな音で工事していったのが怖くて逃げ出したのだ。

しまった!
材木作戦は失敗だった。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

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