コラム

第108話 しまじろうの波乱万丈 その3 飼い主から里親さんへ

2011年2月に里親として龍馬と凜子を迎えたところから(第1話第2話第3話)始まった猫ライフ。その1年半後に自分の不注意で龍馬を脱走させてしまい(第5話から第22話)、その捜索中に沢山の野良猫に出会い、悲惨な現実を知ってしまった事をきっかけに、ボランティア活動を始めることに。主な活動内容は、飼い主のいない猫のTNR(捕獲、不妊去勢手術をして元の場所に戻すこと)、人馴れした猫の保護、譲渡、病気の猫の治療、地域猫活動についての広報など。それから4年以上、色々な事件に遭遇し今に至る(第36話から第107話)。

時は2016年4月。近隣の公園で保護したしまじろう。検査の結果、エイズの爺さんと判明。捨てられたに違いないと勝手に推測。ろくな飼い主ではなかったのだろうと思っていたところに、ネットの里親募集を見て自分の猫ではないかと問い合わせてきた人(Hさん)がいた(第107話)。

飼い主に悪印象を持っていた私は猜疑心一杯で、Hさんも私の事をネット上の人物なので警戒し、雰囲気の良くないメールのやり取りから始まった。しかし、事情を聴くと、外で餌をもらっていたしまじろうを保護し、自宅に入れるも4日目に脱走されてしまった、年齢もエイズであることも知らなかったと。私がネットに掲載した写真を見る限り、違うようにも見えるが、会って確認したい。自分の猫だとわかったら是非引き取りたい、エイズの年寄り猫でも構わないと。

そこまで聞いたところで、私はHさんの事を人柄的には信用できるような気がしたが、一番大事なことはしまじろうを幸せにすること、だから、しまじろうがその人の猫なのかどうかよりも、その人と暮らすことがしまじろうにとって幸せなのかどうかだった。里親募集時の譲渡条件と照らし合わせても、甘えん坊のしまじろうにとってはお留守番が長すぎること、そして脱走するような家であることが不安であった。

譲渡であれば、条件に合わなければ猫を手渡さなくてよいし、飼育方法もこちらの条件を呑んでもらえるはずだ。しかし、飼い主に返還という形をとると、どんな人に何をされても干渉できないし、悪い人ではないのはわかったが、また脱走させても私は何も言う権利がないのだ。

思い切ってHさんに提案してみた。Hさんの猫かどうか会ってもらったところで、検証のしようもないし、しまじろうにとってはお留守番の短い人に可愛がってもらうことが一番幸せだと思うし、脱走させてしまった家に引き渡すのは私はとても心配だ。絶対に私が良い里親を探すから、私に任せてもらえないかと。すると、断る、と強い口調で返事が来たのだ。その子じゃないとダメなんだと。

確かにその気持ちもわからなくはなかったし、私が写真を見る限りはその猫に見えたので、さすがにもう会わせないわけにはいかないと思った。
しかし、会わせるとなるとHさんの仕事のお休みは日曜日のみ。会いに来られるのも日曜日のみ。次の日曜日はしまじろうを里親会に参加することになっていた。里親会は貴重だ。里親会を休んでその人に会わせ、万一自分の子ではないと言われたとしたら、里親会に参加する機会を無駄にしたことになる。1回でも休みたくなかった。

先輩に相談したところ、先輩もまだHさんの事を信頼できるとは思っておらず、「里親会参加は決まっているのだから、先に里親会参加をし、それで里親さんが決まらなかったら会わせるということにしたらどうか」と言われた。それを提案してみたところHさんは、自分の子かどうか確認する前に里親さんが決まってしまったら困るので断るとのことだった。

そこでひらめいた案。
Hさんに里親会に来てもらうこと。そしてその子がその人の猫ではないならば、そのまま帰ってもらい、私は里親会で里親探しを継続。もし自分の猫だと言われたら、里親として申し込んでもらう。現在私が設定した里親条件に合っていない点は敢えて目をつぶる。そうすることによって、こちらの決めた飼育方針に従ってもらえるし、今後何か不審なことや、再度脱走させるようなことがあった時には、猫を返してもらうという権利を持てるので安心できる。まずは、事情をその里親会の主催者に話したところ、了解をもらえた。ぜひその会で作っている契約書を使ってくれと。かなり厳しい譲渡契約書になっている。それに躊躇なくサインしてくれるなら信用してよいだろうと思った。Hさんに提案したところ、同意してくれた。

会う前に一度電話で話すことに。最初は非常にお互い警戒して固い雰囲気だったが、私が会わせると決めたことによって、Hさんは電話口で泣き出した。「ああ、やっとこれで糸口が見えました。探したんですよ、一生懸命…」と。私ももらい泣きしそうだった。これで私もよくわかった。しまじろうを本当に可愛がってくれていたのだろうと。

そして里親会当日。
会場の前で時間より30分近く前に一番先頭に並んでいる女性2人を一目みて、あ、この人だとすぐにわかった。会場内で猫をケージに入れて準備している間も、ずっとしまじろうだけを見ていた。開場時間になると、Hさんは一目散に私のところに来たので、私はしまじろうを連れて、抱っこできるスペースに移動し、ケージから出して良く見てくださいと言った。するとHさんはすぐに、「この子です。にゃすけです。やっと会えました。」と泣きながら言った。それを見て私ももらい泣きしてしまった。しまじろうは、にゃすけというのが本名だったのか。どっちにしても和テイストな渋い名前だな。
 
しかし、それでそのまま猫を引き渡して終わりではない。里親として譲渡条件を守ってもらわねばならない。留守番が長いのは仕方ないが、同居の妹さんにも協力してもらい、なるべく早く帰ってくるよう依頼。また、完璧な脱走対策をするというのが条件の一つだ。それができ、飼育道具の準備ができるまで猫は渡せない。最初はケージに入れた方がよいだろうと、ケージその他用意してもらうものをリストしようとしたら、もう既に全て購入済だった。自分の猫かどうかもわからないのに既に買っていたとは真剣に考えてくれていたことがよく伝わった。そして、自宅内の脱走対策は、まず私がHさん宅を見に行き、玄関に柵を付けるなどの対策をお願いした。それができてから翌週の日曜日に猫の引き渡し。それまでまたしまじろうは病院へ。そして脱走対策の一貫で退院前にマイクロチップを装着することと、高齢猫なので健康診断をすることを勧める。するとやはり腎臓の数値が良くなかったので、フードも処方食にしてもらう。結構いたりりつくせりにしてもらえ、安心した。

そして翌週のお届けでトライアル開始。その2週間のちに正式譲渡へ。
最初はお留守番が辛かったようだが、そのうち落ち着き、甘ったれ全開と報告が来ている。108

色々あったが、Hさんは今ではトップ1、2を争うほどの素晴らしい里親さんだ。近況報告も一番多い。
しまじろうを保護し再会させてくれたことを私に感謝していると言ってくれている。
私にもしんどいケースだったが、エイズの爺さん猫が、晩年ににゃすけとして幸せな家猫になれたのだ、苦労も報われる奇跡のシンデレラストーリーだった。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:大田区の虎徹 コテツちゃん

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