コラム

第107話 しまじろうの波乱万丈 その2 飼い主現わる

2011年2月に 里親として龍馬と凜子の2匹を迎えた(第1話第2話第3話)ところから始まった猫との生活。しかし、その後に自分の不注意で龍馬を脱走させてしまい(第5話から第22話)、その捜索中に沢山の野良猫に出会い、悲惨な現実を知ってしまった事から野良猫救済ボランティア活動を始めることに。主な活動内容は、飼い主のいない猫のTNR(捕獲、不妊去勢手術をして元の場所に戻すこと)、人馴れした猫の保護、譲渡、病気の猫の治療、地域猫活動についての広報など。それから4年半、次々と色々な事件に遭遇し今に至る(第36話から第106話)。

時は2016年4月。近隣のパンジー公園の餌やりのシマコさん(第26話第36話から)から、餌場にふらりと現れた新入り猫の捕獲、去勢手術を頼まれた。捕まえてみると、べた慣れした甘えん坊の年より猫だったので、元飼い猫と推測、探している飼い主がいないか確認するも該当なし。しまじろうと名付けて里親探しに切り替えたが、残念ながら検査の結果、エイズ陽性と判明、しかも爺さんということもあり応募はなし。譲渡会でも甘えん坊で人気はあったものの、やはり迎えてくれる人は現れず。

保護してから2か月経過した頃、あるネットの里親募集サイトを見た、と問い合わせメールが。そこには、「自分が探している猫ではないかと思う。」とあった。私が掲載した写真を見る限りでは違う猫も見えるとも書いてあったが、甘えん坊であること、場所が近いことで問い合わせて見ようと思ったとか。想定外の展開に私は驚き、経験のない事例にとまどった。
      
正直、その時の私の心境は喜ぶべきか警戒すべきか複雑だった。しまじろうを保護してから先輩とも相談し、しまじろうの過去について私は勝手に想定を次のように想定していたのだ。甘えっぷりからして元飼い猫、そしてその飼い主は、首輪もなしマイクロチップもなしで、外に出入り自由にしていたか、または脱走させ、そしてその後も、警察にも届けておらず、近隣にポスターもなかったのでろくに探してもいない、毛並みもパサパサだったので、良質の餌を与えてなかった、エイズの爺さんだから、引っ越しか何かの時に置き去りにしたかもしれないし、しかも爺さんになるまで去勢していなかったというだけでも、まともな飼い主ではないだろう、私が素晴らしい里親さんを探して幸せにしてあげると。その方の名誉のために先に結論を言ってしまうと、実際にはとても良い人だったと後に判明したのだが、その時の私には知る由もなく、相当構えてしまっていた。また先方からしても、私は単なるネット上の人物だ。向こうも警戒していた感じは伝わってきた。

その人をHさんと呼ぼう。とにかくまずはメールで詳しく状況を聞く。するとその猫は外で数年前から餌場で餌やりさんにご飯をもらっており、御多分に漏れずその餌やりも不妊化手術などせず、餌だけやるいわゆる無責任餌やり。Hさんは、いつもその場所を通り、自宅では飼ってやれないので、外で可愛がっていたと。甘えん坊のしまじろうは、外でも膝に乗ってくるほどの甘えっぷり。冬のある日、Hさんは膝から降ろすのが辛くなり、とうとう自宅へ連れ帰ったと。Hさんは近くの一軒家に妹さんと二人で暮らし、早朝から深夜までの仕事、妹さんも仕事なので、とにかく留守が長い。甘えん坊のしまじろうは寂しさに耐えきれず、4日目に脱走してしまったと。どうやってどこから逃げたのかを詳しく聞くと、しまじろうは居間で留守番していたが、昔ながらの一軒家なので、居間などの部屋を仕切る扉が全て引き戸。引き戸は猫が簡単に開ける。しまじろうは居間の襖を開け、お風呂場へ入る扉も開け、風呂場に入り、施錠していなかった風呂場の窓を重いのに自分で開けて脱走したようだった。風呂場の窓が施錠されていないことを突き止めるまでに、あちこちの扉を開けようと試してみたに違いない。マンションと違って一軒家、特に昔の作りはいたるところに脱走可能な出口がある。うちにお泊りした時は、このままここに置いてくれよと思っているだろうと思えるほど、リラックスし、脱走するような猫に見えなかった。あまりに長いお留守番がよほど寂しかったのだろう。 

ここまで聞いて既に私の心は緩んでしまっていた。外猫を保護したと聞いただけで良い人に違いないと想像したが、いかん、いかん、良い人なのはわかったが、私の役割はしまじろうを幸せにすること。同情だけで決断してはならないと先輩からも言われていた。疑問と矛盾を解決するために、さらに聞き取りを続ける。

しまじろうのことをエイズの爺さんと知っていたのかと聞くと、知らなかったと。若い男の子だと思っていたらしい。そして、保護してなぜすぐに病院に連れて行かなかったのかと聞くと、Hさんの休みは日曜日のみ。保護した日は平日だったので次の日曜日に連れて行き、去勢手術もするつもりだったと。

そしてもう一つの疑問、場所が近いとはいえ、私が保護した場所は3キロは離れている。猫が自分で移動できる距離ではないし、数年間その餌場に居ついていた猫が、餌があるのにも関わらず、そんな遠くまで来ることはない。何があったか知らないかと聞くとHさんにはわからないと。トラックの荷台に乗って知らない間に移動してしまったか、あるいは人懐こいので誰かに拾われ、この近くまで連れて来られ、そして、また捨てられたかだろう。だから人馴れしている猫は外にいては危ない。私に保護されたから良かったものの、悪人だったら何をされたかわからない。

そして、もう一つの疑問。警察にも届けておらず、迷い猫探していますのポスターもなかったが、どうして探さなかったのかと聞いてみたら、自分なりに探したとの答えだった。警察にも届けたらしいが、うちとHさん宅の管轄の警察署が違うので、私が問い合わせた時に照合されなかったようだ。ポスターについては、そんなもの貼っても効果ないと誰かに言われたとのことだった。啓蒙の為、私も自分の猫を脱走させ、貼り紙で沢山の情報を寄せられたことを話しておいた。

そして最大の問題、今後しまじろうをどうしたいのかと聞く。するとHさんは、まずは会いたいと。そしてその猫かどうか確かめ、その子だったら自分が飼いたいと。エイズ陽性で年寄りでも構わないとのことだった。

さあ、どうしよう。またまた新米ボランティアの私にはもちろん経験のない難易度高いケースとなったので、先輩に逐一相談しながら進めていったが、先輩も想定外の展開に驚きながらも、慎重に進めるようにと助言をもらう。
どの猫も同じだが、うちに何度かお泊りしたしまじろう爺さんが私にも可愛くてたまらない。良い里親さんを探して幸せにしてやろうと思って保護したのに、不幸にしてはたまらない。Hさんが悪意の人ではないとはわかったものの、既にしまじろうの里親さんの条件を決めていた私の目には、Hさんはその条件のいくつかを満たしていないように見えた。まず 超甘えん坊のしまじろうには、お留守番が短いことが条件だったのだ。それに簡単に脱走できるような家なのは心配でたまらない。里親募集ならこちらに条件設定も、最終決定もこちらに権利がある。不安に思えば譲渡しなくて良いのだが、今回は私に決断権があるのかは定かではない。 
どう進めるか、計画も無しに会わせてしまって、自分の猫です、連れて帰りますと言われたら、検証しようもないし大きく揉める。外で犬猫を保護し、あとで所有権をめぐって裁判に発展するケースもある。それは嫌だ。そんな時間もお金もない。うまく進めなければ…と考えあぐね、あるアイディアを思いついた。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記
猫の里親募集:大田区の虎徹 コテツちゃん

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