コラム

第106話 しまじろうの波乱万丈 その1 エイズ爺さんと発覚

2011年2月に 里親として龍馬と凜子の2匹を迎えた(第1話第2話第3話)ところから始まった猫との生活。しかし、その一年半後に自分の不注意で龍馬を脱走させてしまい(第5話から第22話)、その捜索中に沢山の野良猫に出会い、悲惨な現実を知ってしまった事から野良猫救済ボランティア活動を始めることに。主な活動内容は、飼い主のいない猫のTNR(捕獲、不妊去勢手術をして元の場所に戻すこと)、人馴れした猫の保護、譲渡、病気の猫の治療、地域猫活動についての広報など。それから4年半、次々と色々な事件に遭遇し今に至る(第36話から第105話)。

時は2016年4月。近隣のパンジー公園の餌やりのシマコさん(第26話第36話から)から久しぶりに捕獲の依頼があった。餌場に不妊去勢手術をしていない新入り猫が現れたというのだ。しかも人馴れしていると。はぁー、嫌なんだなぁ、こういうのは。 

通常、野良猫は捕獲(TRAP)して不妊去勢手術(NUETER)させ、そして元の場所に戻す(RETURNまたはRELEASE)。それを英語の頭文字をとってTNR活動という。しかし、何度もコラムでも紹介したように、人馴れした猫は虐待される危険があるので、外には戻せない。それでも保護するスペースがないので、里親さんが見つかり易い子猫以外は保護しないという人も多いが、私はあまり子猫に出会わないこともあり、大人猫でも保護してきた。そしてそれまでは、ハナコ(第51話から)、ゆきちゃん、はっちゃん(第96話から)のように、運よく里親さんを見つけることができていた。その子達を救って、今度の子は救わないということができそうになく、保護しなければならなくなりそうな予感がしていて、捕獲する前からドキドキだった。

シマコさんの餌の時間は午前3時。場所は公園なので人が沢山いる時間には猫は出てこないが、深夜にシマコさんと一緒に公園に行くと、ぞろぞろ出て来る、出てくる。その中に1匹茶虎がいた。シマコさんが、その子だと言った。
ほかの猫がシマコさんから餌をもらおうとシマコさんの周りに集まっている間に、私はその狙った茶虎を餌で離れた場所に誘導し、捕獲器を仕掛ける。普通の野良猫なら、まず、見ず知らずの私が来たことに警戒するし、その上怪しい捕獲器を見ても警戒する。が、この茶虎、警戒のけの字も知らないかのように、私に近寄り、ご飯、ご飯、とすりよってくる。
106.1誘導しなくても、捕獲器の中のおいしい匂いに釣られてすんなり中へお入りあそばす。普通は狭い捕獲器に捕えられたらパニックして大暴れするので、すぐにカバーをかぶせ暗くして落ち着かせるのだが、その必要もなく、その子は捕獲器の中の餌を完食し、もっとちょうだいと私を見ていた。これはもう外には戻せない。保護して里親探すしかないな、と思いながら病院へ搬送。ただ、一つ嫌な予感が…。それは、若くないように見えたことだった。どうしても里親募集マーケットでは、子猫が圧倒的人気で大人猫は不利だからだ。

病院の先生の見立てでは、確かに年配だろうと。猫に聞くわけにもいかないので、年齢は歯を見て推測するしかないのだが、その猫は歯があまりない状態だった。優しい先生なので、遠慮がちに5歳から10歳だろうと言ったが、今思えば、もしかしたらもっと上だったのかもしれない。病院でも緊張も警戒も無くゴロスリ、どう見ても元飼い猫だったことは否めない。しまじろうと名付け、病院で預かってもらいながら、一応迷い猫として元飼い主を探し、名乗り出る人がいなければ、里親探しに切り替えることにした。
先輩ボランティアに相談しながら進めたが、警察や愛護センターに迷い猫届け出の該当者はいない。近隣でも「迷い猫さがしています」のポスターもない。飼い主が探している様子はなさそうだった。毛並みもパサパサだし、去勢もしていない、その上、探しもしていないのだとしたら、飼い猫だったとしても、ろくな飼い主ではなかったのだろう、と私達は勝手に推理した。  

そして数日後、病院から残念な知らせが…。ウイルス検査の結果、エイズ陽性だったと。がーん、じいさんだと言うだけで里親探しも厳しいのに、おまけにエイズ陽性とは…。猫エイズというのは、人間のエイズのイメージのせいで生死にかかわる深刻な感染症のように思われているが、猫の場合、陽性と判定されても、発症しないで寿命を迎えるケースも多いし、よほど激しい喧嘩をしない限り、滅多なことでは感染しない。感染しても、エイズという怖い病気があるのではなく、免疫不全症なので、免疫が低く、風邪をひきやすいとか、引いても治りにいくい、というだけのことだ。免疫を上げるようにサプリを使用したりストレスを与えないでいると、発症しないことも多いのだ。医学的には感染症なので隔離する方が望ましいとは言われるが、保護活動をしている人の中には、エイズ陽性猫は隔離しないで他の猫と一緒に飼育している人も少なくない。
しかし、実際、里親募集すると、発症もしていないし、若くて元気なのに、エイズ陽性というだけでかなり苦労するケースが大半だ。

こうなると益々、こちらの推理は元飼い主であろう人に勝手に悪い印象を作り上げてしまう。年寄り猫でエイズだとわかって捨てたんだろうとか、引っ越しで置き去りにしたのだろうとか、去勢もしていないし毛並みもパサパサだし、飼育状況も悪かったに違いないと。その想定は間違いだっだ事が後日判明する。

160.2絶対私が幸せにしてあげるからねと、しまじろうに約束したものの、私もシマコさんも飼ってはやれない。どんなに時間がかかっても、慈悲深い里親さんを探すしかない。しばらく時間を置いて、迷子として飼い主を探すことを諦め、里親募集に切り替えた。 

元気一杯、甘えん坊で食いしん坊のしまじろう。ご飯、ご飯と要求鳴きが激しく、好意で安価で預かってくださっている病院の営業妨害ははなはだしい。しかし、愛嬌はたっぷりだし、性格も顔もピカイチだから、きっと良い人に遭えるよ、との先生のお言葉。本当にありがたい。先輩にも励まされ、いくつかの里親会に参加させてもらっていたある日、ネットの里親募集の記事を見て連絡して来た人がいた。そこから全く想定外の展開となった。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

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