コラム

第100話 太郎の爆笑話

想定外に私の猫ボランティア活動が始まったのは2011年の2月の事。最初は、里親として龍馬と凜子を迎え(第1話第2話第3話)、そのまま単なる飼い主として楽しく猫ライフを送るはずだったところ、その後に自分の不注意で龍馬を脱走させてしまい(第5話から第26話)、その捜索中に出会った沢山の野良猫の避妊去勢手術に関わったことがきっかけだった。ボランティアやりたくて手を挙げたわけではない。一度悲惨な外猫生活を知り、手術をしないで放置した野良猫がどんな勢いで増えるか知り、どうすればよいかも知ってしまった後に、野良猫見かけたらもはや放置できなくなってしまっただけだった。

龍馬脱走事件の半年後、2013年11月。その日に限って偶然猫の大群を見かけ(第26話)、仕方なく人馴れした子猫の保護譲渡や、保護できない猫の不妊去勢手術をした(第28話から第35話)。その現場が終わったら止めるつもりだったが、それから4年以上今でも猫ボラ活動は続いている。(第36話から第99話)。
その体験記を綴って早100話だ。新米ボランティアの私でも、そんなに多くのネタがあるのかと自分でも驚いてしまう。動物愛護の世界は、全く持って「事実は小説より奇なり」である。これまでは怒りを感じる事件が多かったが、第100話を記念して珍しく爆笑話を披露しよう。

時は2016年3月。前号でも紹介した通り、初めて一般の里親さんに譲渡会経由で保護猫のゆきちゃん、はっちゃん親子(第97話から第99話)を譲渡することができてほっとしていた頃。それで私は、期せずして猫ボラ修行の階段を一段上って成長したわけだが、さらに上を目指して頑張ろうなどと思ってなどいない。大半のボランティアはそうだが、辛くて腹の立つことばかり、しかもお金もかかる。一刻も早く終わらせてやめたいのが本音だろう。私も自分の視界に野良猫が入って来ないことを願うのみだった。

しかし現実はそうはさせてくれない。3月といえば、猫の発情から出産を控えた時期。商店街を歩いていると、何やらお腹が膨らんでいるような猫を見かけてしまった。単に目の前を一度通り過ぎただけであれば捕まえることはできない。が、偶然にも翌日も見かけた。そしてその翌日も。ということはその辺りに生息している猫だ。気になってその辺りをリサーチすることに。その場所はうちからは少し離れているので、その近所に知り合いはおらず、猫について情報収集できない。当時は野良猫のことで知らない人にいきなり話しかけたりする勇気はなかったが、いた!!その猫が!誰かの車の上で昼寝中だった。とりあえず猫に近づき、オスかメスか、本当に妊娠しているのか、単なるデブなのか見極めようとするも、逃げられてしまいどうもわからない。お腹のゆらゆらはやけに目立つ。とり急ぎ、遠くからその猫の写真とビデオを撮って先輩ボランティアさんに送信。意見を聞くと、以前にも単なるデブかと思っていた猫を念の為に病院へ搬送したら妊娠していたということもあったから、とにかく捕まえて病院へ連れていくようにとのことだった。SNSにも写真をアップして猫友さんの意見を聞いてみると、妊娠の疑いはありそう、早く捕まえよとのこと。

100話_太郎

捕まえようにも、どうやって?これまでは餌場に集まってくる猫を餌やりさんの協力のもと、捕獲してきたのだが、どこで御馳走にごちそうになっているのかもわからないでは捕まえられない。それに捕獲器という罠をしかけて捕まえるのだから、お腹が空いていなければ捕獲器に入ってくれない。それでいつもは餌やりさんに、捕獲予定の前日から捕まえたい猫だけ餌を抜いてもらうのだ。だから捕獲には餌やりさんを探さないといけないのだ。

知らない人に話しかける勇気がないと言ってはいられない。あの腹のゆらゆらからするともうすぐにでも生まれるのではないか!とドキドキだ。その周囲を歩いていた人に話しかけ、当該猫の写真を見せて、この猫知りませんかと聞いてみる。
「あぁ、この猫はいつもここの車の上で昼寝してるよ、そこの家に入っていくのを見たからその家のお婆さんの猫じゃないの?」との返事。

その家にピンポンするしかない。  
ピンポンもない昔ながらの家だった。玄関の外から「こんにちは」と呼びかけるも返事がない。ガラリと引き戸を開けると、部屋の中にお婆さんがいるのが見えるが、呼びかけても聞こえない様子。仏壇に向かってお経を唱えている。和室の扉まで行って、さらに大声で呼びかけると、やっとお婆さんは振り向いた。
猫の写真を見せて、「この猫はお婆さんの猫?妊娠しているみたいだから早く手術しないと生まれちゃうよ」と言うと、
そのお婆さん曰く、「あら、太郎ちゃん、妊娠してるのかえ?」

は?太郎ちゃん?オスなの?
どっちか知らないが、飼い猫ではなく、裏庭で餌をやっているらしい。
餌をやっている場所を見せてというと、どうぞどうぞと、和室に私を通し掃き出しの窓を開け、裏庭らしきを見せ、ここと。
裏庭と言っても、奥行50センチも無い狭いスペース。捕獲するには狭すぎるスペースだ。良い方法がないかと家の中と外をじっくり見ている私のことを一切気にせず、お婆さんはお経を続けた。
見ず知らずの私を家に入れても、全く気に留めずにお経を唱える姿を見て、私は猫どころか、このお婆さんのことがとても心配になった。

そこへ、このお婆さんの妹らしき人が帰宅。写真を見て、
「あらぁ、きな子ちゃんじゃない?さっきご飯食べに来ていたわよ。」

えー?きな子?メス、オスどっちなのさ?

猫ボランティアさんの活動ブログを見ていると、餌やり婆さんというものが頻繁に登場するが、たいていはこんな感じのお婆さんであることが多い。このお婆さん姉妹は話は通じず、うまく協力してもらえるのか不明ではあるが、良い人であることは間違いない。話は通じない上に、自分勝手な理由で手術に反対する餌やりも沢山いる。

今回は良い餌やり婆さんでよかったのではあるが、その後捕獲プロジェクトの協力メンバーとしては若干頼りない気がした。しかし、翌日からこのメンバーでスタートするしかなかった。
続く。

コラムニスト:Candy (キャンディ)
ネコジルシ:保護猫日記

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