コラム

犬の老衰に見られる症状

ペットに関する栄養学の研究は進化し、ドッグフードの品質は大きく改善されました。そして動物医療も大きく発展し、生活環境が屋外から屋内へ変化したこと等を背景に、ペットたちの平均寿命はここ10年程で倍近くまで伸びています。
しかしその一方で、老衰に伴う病気の発症や痴呆、介護といった、これまでになかった悩みも急増しています。

犬の老衰に見られる症状

症状が見られたとき、飼い主ができること

悩む女性一昔前までは、大型犬の寿命は平均で7,8年、小型犬が10年と言われていましたが、最近ではほぼ倍近い年齢まで長生きをすることが当たり前になっています。中には18歳、20歳と驚くほどの長寿を達成し、ギネスブックに載るほどの犬もいるくらいです。

このような長寿化は、家族としては嬉しいと感じる反面、日々の生活面ではこれまでになかった様々な悩みが生じます。

高齢になったペットに多く見られる悩み事は下記の通りです。

  1. 病気の発症
    癌、心臓病、内臓疾患など手術や入院、長期通院を必要とする重篤な症状。
  2. 生活習慣の乱れ
    トイレ、無駄吠え、深夜の徘徊など、これまでになかった問題行動が目立つようになります。特に昼夜逆転が目立つようになります。
  3. 食事の介護
    高齢になり顎、歯が弱り自力では食事ができないこともあります。しっかりと咀嚼が出来ず消化不良を起こすことも目立ち始めます。
  4. 足腰の衰え
    歩行、散歩、室内の階段など、日々の生活に支障が生じるようになります。中には寝起きの都度、飼い主の補助が必要になることもあります。

高齢化による症状が目立つと感じてきたら、若く健康であった時期の生活習慣は一旦リセットしましょう。そして現在の年齢や体力、運動機能に応じた生活環境を整えてあげましょう。ただ、愛犬自身は自身の衰えを認識出来ていないこともあり、時には無理をしてしまうこともあるので、家族がその都度フォローをしてあげる必要があります。

具体的な改善策は以下です。

  1. かかりつけ医を見つける
    動物病院高齢になると、通院の頻度も上がり、症状の変化も多々起こります。夜間緊急対応、手術、入院、リハビリとトータルで依頼することの出来るかかりつけ医を早期に見つけておく必要があります。
  2. 生活習慣の改善
    高齢になるとトイレの頻度が高まるので、散歩は短時間、複数回に変更することが理想的です。また、食事も一日3,4回に小分けにし与えると、消化吸収の負担を軽減することが出来ます。
  3. 足腰の衰えに合わせて生活エリアを区切る
    階段やソファーなど段差の移動は負担が掛かります。ゲートや柵、スロープを設置し、無理なく安全に生活が出来るように環境を整えます。
  4. 昼夜の区別をはっきりと認識させる
    高齢になると昼寝の時間が多くなり、昼夜の区別がつきにくくなります。規則正しい生活リズムを保つためにも、朝夕の散歩を習慣化し、夜8時を目安に静かに眠ることができる場所へ移動させる、食事は起き餌にせず、決まった時間に与える等、心掛けましょう。

高齢化による生活の悩みはしつけでは改善が出来ません。言葉で強く叱ったりするしつけ方法ではなく、愛犬が今できることや無理のないことをさせてあげる、受け入れてあげることも考えていくことが大切です。

食事を与えても嘔吐してしまう

健康な犬にとって、食事を嘔吐することはいとも簡単なことで、身体的な負担もさほどありません。育児中の母犬は自身が一旦口にした物を吐き出して、離乳食として子犬に与えます。また、成犬期には、勢いよく食べものを飲み込んでしまった直後や、胃に不快感がある時などに一旦吐き出すことがあります。

このような生理現象の一環である嘔吐の場合、嘔吐した直後に犬自身が嘔吐物を再度食べようとすることもあり取り立てて気に病む必要はありません。しかし高齢になると、以下のような症状が見られる時があります。

  1. 食べ物を口にした直後に勢いよく吐き出す
  2. 食べ物と合わせて大量の胃液を吐く
  3. 食後数時間経過してから、未消化の状態(食べ物の形状が残っている状態)で嘔吐する
  4. 胃液を少量ずつ複数回嘔吐する
  5. 嘔吐の前後で苦しそうな表情を見せる
  6. ぐったりとしていて元気がない
  7. 目がうつろ
  8. 嘔吐後に大量のよだれが出ている
  9. 嘔吐後にけいれんや震えがある

このような場合の家庭では以下のような対処をしましょう。

  1. 嘔吐物の状態(色、形状)を確認する
  2. 飲み水、食べ物を一旦片付ける
    ※嘔吐直後に飲食を行うと、再度嘔吐をすることがあるので、4~6時間は飲食を絶ちます。
  3. 安静に出来る場所で休ませる
    ※ハウスなどに入れ、安静に過ごさせる。

愛犬の症状によってはすぐに動物病院の受診が必要になります。以下のような症状が見られる場合には、すぐに病院を受診しましょう。

  1. ぐったりとしている
  2. 目がうつろ
  3. けいれんや発作などが見られる
  4. 自力で立ち上がれない
  5. 度々嘔吐を繰り返す
  6. 嘔吐物に血液が混ざっている

高齢犬の嘔吐は、単なる生理現象ではなく内臓機能の異常に関係しています。放置することで脱水症状が進み、危険な状態になることがあるので、速やかに動物病院に指示を仰ぎましょう。

老衰が原因で起こしやすい病気

犬の高齢化が進む中で、最近では人間とほぼ同じ病気の発症が目立つようになっています。

  • 心臓病
  • 腎臓病
  • 心臓発作
  • 痴ほう

上記のような病気の他にも肥満、糖尿病といった生活習慣病も急増しています。中でも、痴呆は共に暮らす家族にとって大きな負担となる症状です。

痴呆が進行している場合に見られる行動は以下のようなものがあります。

  • トイレの失敗
  • 飼い主への威嚇、噛みつきなど攻撃的な態度
  • 深夜の遠吠え
  • 食べ物への異常な執着
  • 同じ場所をぐるぐるといつまでも周り続ける
    ※一か所で円を描くように回り続けることもあります。
  • 水やシャワーを極端に嫌がる
  • 脱走

吠える犬これらの行動の中でも、深夜の遠吠えや無駄吠えは近隣への騒音トラブルも関係し大変悩ましいものです。このような症状を完治させる方法はありませんが、出来る限り家族にも、愛犬自身にも負担になりすぎないよう生活をする事が大切です。

痴呆を発症している場合、安全上の理由からペットホテルやトリミングショップの利用が難しくなります。今後やってくるかもしれないもしもの時や、家族が留守をする際に、愛犬の世話を依頼できる動物病院やペットシッター、自宅訪問型のトリミングサービス等を早期に見つけておくと安心です。

末期症状がみられた時に考えておきたいこと

愛犬の長寿化と共に家族にとって大きな課題となるのは、どのような高齢期を過ごさせるかということです。病気、生活環境、日々の世話や介護、金銭的な負担など様々な視点から考える必要があります。

特に、ペットにも癌の発症が今や当たり前となる中では、癌という診断を受けた時にどの程度までの高度医療を受けるのか、特別な医療措置を取らずに自宅でこれまで同様生活をさせつつ天寿を全うさせるのかなど様々な選択肢があります。

高齢の愛犬に手術を受けさせるということは、身体的な負担があり、術後の回復を考えると家族のフォローも欠かせません。手術費用も数十万円と高額になります。家族間でもどのような方法が最善なのかと意見が分かれることでしょう。

海外では、重篤な病気が発見された時点で安楽死という選択肢を選ぶことが、愛犬の苦痛をやわらげる最善の策と考えられていますが、日本ではこの方法に様々な意見があり、動物病院によっても対応の可否が分かれます。

いつかくる日のために、家族でしっかりと話し合いの場を設けることも愛犬との生活において大切なことであると意識しておく必要があります。

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