コラム

猫によく見られる腎臓系の病気がキケンな訳

この記事は2017年6月30日の記事を再編集しました。

ペットとして飼育される動物の中でも、猫は他と比べて腎臓疾患にかかりやすいと言われています。
腎臓は、病気によって一度機能しなくなると現状完治が難しく、最悪の場合は命に係わる重篤な状態になることもあります。

腎臓系疾患の内容を知っておくことは、早期発見をするためにも大切なことです。今回は、腎臓疾患の種類と特徴から、どのような病気で危険なのかを読み解きます。

猫によく見られる腎臓系の病気がキケンな訳

猫はなぜ腎臓疾患になりやすいのか

腎臓の働き

腎臓の働きは、血液をろ過して不必要なものだけを取り除き、再度一定濃度を保った血液を送り続けます。この仕組みは、腎臓のネフロンと呼ばれる部分(糸球体・ボーマンのう・近位細尿管・遠位細尿管・ヘンレループ・集合管)で成り立っています。

ネフロンの量

血液をろ過したり、尿生成に関わるネフロンの量が猫は極端に少ないことも、腎臓疾患になりやすいことの要因であると言われています。

猫のネフロンの量は約20万個とされており、犬の約80万個と比べても4分の1しかありません。ネフロンは、一度その機能が失われると現段階では再生できない組織なので、ネフロンが元々少ない猫は、腎臓疾患にもなりやすいと考えられています。
※人間のネフロンの量は約200万個です。

しかし、腎臓の密度とネフロンの数を比較すると、人間・犬・猫はほぼ等しい比率になることが分かっており、この説は賛否が分かれるところとなっています。

猫の先祖と尿の特性

現在ペットとして飼育されているイエネコの先祖はリビアヤマネコ(アフリカヤマネコ)であると言われています。北アメリカや中近東等の砂漠地帯にある西アジアに生息していたリビアヤマネコは、水の少ない地域でも生活ができるように体も順応していました。

そのため、尿の水分は必要最低限に抑えられ、弱酸性の濃い尿が出ていたのです。しかし、そのバランスが一度崩れることは、急性腎不全の原因にもなる腎臓結石ができてしまう要因にもなりました。

先祖の特性を引き継いでいるため、イエネコも腎臓病になりやすいと言われています。しかし、これについても賛否が分かれるところとなっているのが現状です。

意外と多い!猫の腎臓疾患の種類

腎臓疾患には様々な種類があります。併発する場合や、進行することでさらなる腎臓病を招くことがあるので、疾患の内容を知ることはとても重要です。

腎結石

腎結石は腎臓と尿管を繋ぐ腎盂(じんう)という部分に、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムといった物質が固まってしまい、石ができてしまう病気です。

「長毛種よりも短毛種のほうが発症率が高い」「純血種のほうが発症率が高い」等のデータがあり、一部の腎結石には遺伝の関係も指摘されています。また、尿路感染症によって尿がアルカリ性に傾いた場合にも、結石ができやすくなるとされています。

腎結石は小さい時には痛み等の症状がなく、結石が大きくなると急性腎不全等の重篤な症状となって現れるため、注意が必要です。

腎盂腎炎(じんうじんえん)

腎盂腎炎とは、尿路感染症をはじめとする細菌感染によって、腎盂にまで炎症が波及することで腎臓全体が機能しなくなる状態になります。
急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎がありますが、後者の場合には慢性腎不全へ移行することがあります。

症状として、多飲多尿や尿が濁ったり臭くなったりする、発熱や食欲不振、腰のあたりを触ることを嫌がったり、軽く叩いても嫌がる傾向が見られることがあります。

糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)

血液を正常に保つためのネフロンの一部である「糸球体」に炎症が起こる病気です。

初期は無自覚なことがほとんどですが、尿検査をすると尿タンパクが多い傾向が見られるようになります。
進行すると、おとなしくなったり、毛艶が悪くなる、脱水、食欲低下、嘔吐、下痢等の症状も見られるようになり、重篤になると慢性腎不全の症状が現れるようになります。

水腎症(すいじんしょう)

水腎症は何らが原因となり、尿路や尿管等から尿の排出が困難になり、腎臓に尿が溜まって膨張する等の症状がみられます。

腎臓は二つあるので、一つが機能している場合は無自覚なことがあります。二つとも機能せずに完全に詰まってしまった場合、腎不全や尿毒症に移行していきます。

水腎症にかかると口臭にアンモニア臭が混じったり、お腹を触ると膨張した部分がしこりのようになっていたりするので、日頃からスキンシップを取りながら確認するのが良いでしょう。

腎アミロイドーシス

腎アミロイドーシスは、アミロイドという繊維状のタンパク質が腎臓に沈着することで、腎機能を低下させてしまう病気です。アミロイドは腎臓だけでなく、心臓や肝臓、消化管や神経等、全身の様々な場所に沈着する可能性があり、機能障害に陥らせることがあります。

原因は二つあるようです。
一つは、体内に慢性的な炎症がある場合、肝臓からアミロイドが過剰放出されてしまうこと。二つ目は遺伝です。アビシニアンやシャム、ソマリ・オリエンタルショートヘア・ボンレックスは遺伝によって腎アミロイドーシスを発症しやすいと言われています。

腎不全

腎不全には急性と慢性があります。どちらも腎臓の機能が失われていく病気ですが、急性の場合は機能低下症状が急速に進むため、放置することは即生命の危機に直結します。また、慢性の場合は少しずつ進行するので、進行を遅らせるための治療が必要になります。

どちらにしても、腎臓は一度機能停止をしてしまうと、回復の見込みがないので、早期発見をすることが重要です。

猫の発症が多い病気なので、次の章でもう少し詳しく見てみましょう。

猫の死因、第2位は腎不全

猫の死因、第2位は腎不全となっており、高齢になる程にその確率が高くなる傾向にあります。また、15歳前後の猫の約3匹に1匹が腎不全(30%)という統計も出ており、同じ東経の8歳前後の猫の発症率(約8%)と比べると、約22%も増えるという結果になっているのです。

腎不全には急性と慢性があり、それぞれに特徴があります。

急性腎不全

腎臓自体に感染症や中毒等のダメージを受ける場合、心筋症や腎結石・下部尿路疾患等、他の部位の病気が引き金になっていることがあり、どちらも急速に腎臓機能が低下する症状がみられます。

女医
慢性腎不全との違いは、早期発見によって適切な治療をすることができれば、腎臓機能が失われる前に処置をすることができ、回復の見込みがあるということです。

症状として、尿の量が減ったり、排尿をしなくなると言われていました。しかし、現在では逆に多飲多尿になることが分かっています。また、よだれが出る、アンモニア臭を含んだ口臭がする、嘔吐等も見られるようになります。
どちらにしても普段とは違う様子が見られた場合には注意しましょう。

治療方法は複数あります。

  • 輸血やホルモン剤の投与
  • 血液透析等を通し、脱水を予防しながら電解質のバランス改善
  • 血液のろ過
  • 尿の排泄を促す処置
  • タンパク質以外の腎臓に適した栄養補給

なお、急性腎不全を引き起こす原因となった他の病気があれば、その治療も同時に行うことで効果を高めます。

慢性腎不全

慢性腎不全と判断された猫は、すでに腎臓機能の50%以上が失われた状態になっています。腎臓は一度機能を失うと回復することができないので、慢性腎不全の場合は今後いかに進行を遅らせていくかが治療の焦点となります。

また、健康な猫であっても高齢と共に腎臓機能は低下していきます。高齢になる程、慢性腎不全は増える傾向があるので、高齢猫の飼い主さんは特に注意が必要です。

症状は、慢性腎不全となる前段階の慢性腎臓病等の初期段階では多飲多尿くらいしか変化が見られないため、見逃してしまいがちです。気づかぬうちに確実に腎臓機能が失われていくことから「サイレント・キラー/沈黙の暗殺者」とも呼ばれています。
※慢性腎臓病=腎機能が低下している状態
※慢性腎不全=腎機能が失われた状態

慢性腎不全の治療で効果的なのが食事療法です。慢性腎不全のステージ2(腎機能33~25%)・ステージ3(腎機能25~10%)の猫に適切な療法食を与えた場合、余命が2倍以上になるというデータもあります。

しかし、この時の注意点は療法食のみを一生涯与え続けなければ効果がないということです。おやつなどを与えてしまっては効果は出ません。そのため、食いつきの変化等によって療法食のメーカー等を変えたい場合は必ず獣医師への相談が必要となります。

食事療法のみで治療を進めることもあります。多くの場合は腎臓を保護する薬や血中リン濃度を調整する薬、低カリウムの場合には点滴や脱水を防ぐための輸血等を同時に実施しながらの治療となります。

おわりに

猫の腎臓病がなぜ多いのかは様々な説が出ていますが、明確な答えは未だに出ていません。しかし、腎機能は一度失われると、現代の医学では回復させることが不可能であることは共通認識となっています。

予防のためには、猫の食事内容や量、飲み水の量、健康を維持するための運動、ストレスを与えない等、普段からの生活習慣が重要となります。また、早期発見のためにも、健康時の体重や飲食料、口臭、毛艶、行動等を把握し、スキンシップを通して日々の変化を見ることも大切です。

愛猫のためにも、日頃から小さな変化を見逃さない習慣を身に付けていきたいものですね。

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