猫にみられる眼の病気とその治療方法
この記事は2017年8月17日の記事を再編集しました。
野良猫をよく見ると、眼に異常がある子を容易に発見することができます。つまり、猫にとって「眼」は弱い部分であり、病気になりやすい部分でもあると言えるのです。
幸い、飼い猫の場合は毎日飼い主と顔を合わせるため、重篤化することを防ぐことが出来ますが、油断は禁物です。
今回は、猫に多くみられる眼の病気の症状や原因等から注意したい点、及びその治療方法についてお話します。
結膜炎
症状
結膜炎とは、人間でいえば白目の部分を覆っている結膜が、炎症で赤くなったり腫れたりする病気をいいます。猫は白目の部分が見えにくいため、初期の段階ではまぶたを押し下げて、確認するしかありません。
炎症部分はかゆみや痛みを伴うため、前足で眼の部分を擦ってしまい、さらに症状を悪化させる原因となります。症状が進むと目やにが出るようになり、ひどくなると目やにでまぶたがくっついて開かなくなることもあります。
原因
原因は以下が主たるものとなります。
- 目に異物が入り炎症が起こる
- ウイルスや細菌に感染し炎症が起こる
- 角膜炎・チェリーアイ等、他の病気が原因で炎症が起こる
- アレルギー
治療方法
基本的には目の洗浄を行い、点眼薬や軟膏を用いて治療します。それと同時に伝染性のあるウイルスや細菌が原因の場合には同居動物との隔離、目を触ることを防ぐためにエリザベスカラーの使用なども行います。
予防するには
ウイルスや細菌による感染を防ぐために、予防のためのワクチン接種が効果的です。また、完全室内飼いにすることも細菌から猫を守る手段の一つです。
異物混入での結膜炎を防ぐ方法としては、生活環境を清潔に保ち、必要ないものを猫の届く範囲に置かないことも重要になってきます。当たり前ですが、猫の顔の位置は床に非常に近いため、ちょっとしたゴミやハウスダストも目に入りやすい環境で生活しています。生活環境を清潔に保つということは、病気予防の一環と捉え掃除を怠らないようにしましょう。
チェリーアイ
症状
猫には第三のまぶた、または瞬膜と呼ばれることもある「第三眼瞼(だいさんがんけん)」があります。この部分が赤く腫れて飛び出し、元に戻らなくなる病気を、その見た目からチェリーアイと言われています。正式には「第三眼瞼腺脱出」「瞬膜腺の脱出」のことを言います。
このチェリーアイは片目だけに現れる場合と両目に現れる場合があります。また、結膜炎などを併発していることもあります。
原因
多くの場合、眼窩(がんか)と呼ばれる頭蓋骨全面の穴(眼球が収まる窪み)や、瞬膜が損傷したことによって起こります。また、遺伝による先天的に目の周りの組織が欠損していることが原因となることもあります。
治療方法
軽度の場合であれば、脱出した三眼瞼を通常の状態に戻し、目薬の投薬などで内科治療が行われます。しかし、チェリーアイになってから時間が経過している場合や、程度がひどい場合、再発を繰り返す場合などには外科手術が必要になります。
外科的手術にも2通りあり、第三眼瞼を通常の状態に調整する手術と、第三眼瞼を切除してしまう手術があります。後者は再発する可能性がなくなる一方で、一生ドライアイに悩む可能性が高くなるため、切除手術は重度の場合のみ採用される場合が多いです。
予防するには
遺伝的・先天的以外にも、ケガなどの眼部分への損傷が原因であることが多いため、予防はが難しい病気でもあります。強いて言うのであれば、眼のケガをしやすい環境を作らないことが挙げられます。
眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)/逆さまつげ
症状
眼瞼内反症は眼瞼、いわゆる“まぶた”が内側に反ってしまい、まつげなど等が眼の表面が常に刺激を受ける状態になる病気です。
最初は瞬きが多くなったり光りを眩しがったり、眼を擦ることが多くなったと感じることが多いのですが、次第に結膜炎などの症状が現れます。涙を流す、まぶたを痙攣させるといったような症状が出る場合もあります。さらに悪化すると角膜潰瘍で眼の表面などがただれ、最悪の場合には失明することもあり得るため、放置することは厳禁です。
原因
生まれつきまぶたの皮膚がたるんで内側に反ってしまうことで起こる場合があります。なりやすい猫種としては、短頭種で顔が比較的平坦なペルシャ猫やヒマラヤンに多く見られます。
後天的に起こるケースとして、結膜炎や角膜炎の眼の痛みから痙攣が起こり、まぶたが一時的に反ってしまった場合や、体重が減ることで眼球が窪み、まぶたが反ってしまう場合等が挙げられます。
治療方法
眼の中に入ってしまったまつげを取り除くことで対処できますが、これは根本的な治療とは言えません。多くの場合、外科手術によってまぶたを通常の状態に整える方法が採用されます。
しかし、反りの状態によっては一度で整えることは難しく、数度の手術を必要とすることもあるのが現状です。
予防するには
先天的な場合には、予防をすることはなかなか難しいですが、後天的で結膜炎などが原因の場合には、結膜炎にならないようにすることで予防する事ができます。
緑内障(りょくないしょう)
症状
緑内障には、急性と慢性があります。急性緑内障は、何らかの原因で眼圧が急激に上昇し、瞳孔が開いたままの状態になり、光を眩しく感じます。角膜が浮腫んでしまうため、眼の色が濁った青色になるなどの変化も見られます。強い痛みも伴うため、頭を触られると嫌がる傾向も見られます。
慢性の場合には、徐々に眼圧が増す場合と、急性から歓声に移行する場合があり、次第に眼球が吐出してきます。これは眼圧を調整している眼房水が排出されず、どんどん眼球内部に溜まってしまうことが原因です。視野が狭くなるほか、重度になると失明することもあります。
原因
生まれつきの先天性、眼房水の調節機能自体が原因となる原発性の場合もありますが、猫には少なく、他の眼疾患が原因の場合や、伝染性腹膜炎・トキソプラズマ・白血病ウイルスなどの感染が原因による場合が多くあります。
治療方法
治療法としては、まず眼圧を下げることが主体になります。内服薬や点眼薬などの投薬による治療方法をとる場合や、外科的手術による場合、又はそれらを併用する場合があります。
しかし、投薬だけで完治する場合は少なく、ほとんどの場合が外科的手術との併用になります。
また、緑内障の原因が感染など他の疾患による場合には、その治療も必要になります。
予防するには
緑内障の予防は難しいのですが、感染による場合もあると考えると、感染予防のためにワクチン接種は有効であると考えられます。
おわりに
猫が眼の病気になった場合、その多くは猫がしきりに顔を洗う(前足で顔を擦る)ことが増えるという特徴があります。これは眼の痛みやかゆみがあったり、異物を感じたりすることから、それを取り除きたいと思う気持ちが行動に表れます。
この動作を見逃すことなく、眼や顔のチェックをすることが早期発見に繋がります。
眼の病気を起こした場合、飼い主が自宅で数時間おきに猫に点眼をすることが一般的です。猫の点眼をとても嫌がるので、飼い主にとってもつらい作業になるでしょう。
筆者の場合も、飼い猫の眼の病気にが治ってからもしばらくの間、寄り付いてもらえず、悲しい思いをしました。
しかし、猫の眼は患いやすい反面、一見酷く完治しないように思える場合にも、多くの場合は見た目には分からないほどに回復してくれているものです。
毎日のチェックはもちろん、いざとなたっ時にも心を鬼にして点眼するなど、獣医さんから指示されたことを実行できるように、日頃から猫のとのコミュニケーションを密にしておきましょう。