コラム

猫に噛まれた!引っ掻かれた!その時の応急処置と感染症のお話

猫を飼っている方なら、一度は噛まれたり引っ掻かれたりした経験があると思います。その多くは甘噛みだったり、皮膚の表面を少し傷つけられたりする程度なので、普段はあまり気にしないかもしれません。

しかし、そのままにしておいたために、とんでもない病気に発展してしまうこともあるのです。

今回は、駆虫や予防接種などをキチンと受けている猫でも安心できない、猫を媒介する感染症の、症状と応急処置の仕方等についてお話ししたいと思います。

猫に噛まれた!引っ掻かれた!その時の応急処置と感染症のお話

猫はなぜ慣れた人間にも噛んだり引っ掻いたりするの?

疑問を持つ女性猫は通常、兄弟猫とじゃれあったり狩りごっこなどをしたりすることで、甘噛みや爪を出さずに猫パンチすることを学びます。敵意のないものにケガをさせないためです。

しかし、幼いころに親兄弟から引き離されてしまった仔猫には、それらを学ぶ機会がありません。そのため、飼い主さんなどに加減が分からずにケガをさせてしまうこともあるでしょう。

本来、こうしたことは、一緒に生活している内に学ぶものです。問題は、そうしたことを学んだはずの猫の本気噛みや爪での攻撃です。
「心を許しあっていると思っていた飼い猫に噛まれた!」「かわいい野良猫が近づいてきたので撫でようとして引っかかれた!」など、猫にケガを負わされたという話は尽きません。

想いが通じなかったのかと、悲しい気持ちになる瞬間ではありますが、猫の気持ちになってみると、事情は少し変わってきそうです。
猫は、ちょっとした周辺の変化にも敏感なので、驚いたり、恐怖を感じたり、興奮したりすると、自己制御できなくなってしまう瞬間があるからです。

本気で驚いたり身に危険を感じたりした時には、たとえ飼い主さんに対してでも、甘噛みなどではなく、本気で噛んだり、爪で攻撃してきたりするのです。
これは、弱肉強食の世界を生き抜いてきた猫の自己防衛手段であり、猫が悪い訳ではありませんので、ここは人間側が譲歩するしかなさそうです。

しかし、本当の問題は、引っかかれたり噛まれたりした後のケガです。実は、そのままにしておくと大変なことになるかもしれないのです。

猫によるケガで感染?その種類と症状・ケアについて

「何度も、軽いミミズ腫れ程度のケガなら負っている」という方は多いでしょう。しかし、それで今まで何もなかったことは、運が良かっただけかも知れません。

大変なことになってから慌てないためにも、猫によるケガで注意しなければならない病気と症状・そのケアについて見ていくことにしましょう。

パスツレラ症

パスツレラ菌は、猫の口の中(口腔内)に、ほぼ100%の確率で存在する菌です。
猫にとっては通常、害はありませんが、これが人間の粘膜質の部分や傷口に入ると、短時間で腫れ・化膿などの症状が表れ、非常に強い痛みとともにその範囲を広げていくことがあります。炎症が起こることで、鼠径部や脇の下、喉などのリンパ節も腫れてくる場合もあり、苦しむことになるのです。

パスツレラ菌には、噛まれたり引っ掻かれたりした場合はもちろん、猫に舐められたり、体をすり寄せられたりしただけでも感染することがあります。
なぜなら、猫は身繕いをするために体中を舐めますが、その時に爪や被毛にもパスツレラ菌が付着してしまうからです。

猫ひっかき病(バルトネラ症)

病名には、ひっかき病という名前が付いていますが、もちろん噛まれたことにより感染することもあります。また、舐められたり被毛が接触したりした部分に傷があると、そこから感染する場合もあります。

原因は、猫に寄生するネコノミの排泄物にあるバルトネラ菌によるものです。

人間がこれに感染すると、3日から10日ほど経ってから、虫刺されに似た赤みや水泡が現れます。さらに1~2週間経ってから、リンパ節が腫れて痛みや熱、悪寒や頭痛などの症状が表れます。
パスツレラ症とは違い、ケガを負ってからすぐに発症しないため、原因が特定しにくいところが厄介です。しかし、発症してから数週間から一ヶ月ほど腫れや痛みなどが持続したあとは、多くの場合は自然に治る傾向にあります。

ただ、稀ではありますが、脳炎や眼球運動障害、肉芽腫性肝炎、心内膜炎などの重篤な症状に発展することもあります。早期回復のためにも病院での治療は必須です。
また、猫ひっかき病は、猫にも症状の出ることがあり、発熱や食欲不振、また神経機能の障害(一過性)がみられる場合もあります。

予防のためにも、猫ノミがいたらすぐに対処し、猫ノミが猫に寄生しない環境を保持することが重要です。

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症

猫による感染の中でも危険なのが、このカプノサイトファーガ・カニモルサス感染症です。
カプノサイトファーガ・カニモルサス菌は、パスツレラ症と同様に猫の口の中に常在している菌で、他の感染症と同様に、噛まれたり引っ掻かれたり、他の原因でできた傷口などから感染し発症することがあります。

発症すると、約2日から2週間ほど経過してから発熱や腹痛・頭痛・嘔吐などの症状が出ます。その後、意識障害に陥ることや、敗血症や髄膜炎の症状が出て、敗血性ショック・多臓器不全などにより死に至ることもあるのです。
抗生物質の投与での治療が可能で、完治する例もあることから、この感染症も早期発見が要になります。

その他の感染症

非常に稀にではありますが、破傷風や狂犬病といった病気に感染することも考えられます。これらは死に至る危険の高い感染症です。

応急処置と予防方法

噛まれたり引っ掻かれたりした場合には、すぐに応急処置をすることが大切です。
まずは、傷口を水道水などのきれいな水でよく洗い、消毒液で消毒し、必要に応じて患部を圧迫することで止血をすれば応急処置の完了です。

救急箱受傷したら必ず発症する訳ではなく、応急処置だけで大丈夫な場合もありますが、心配があれば、猫により受傷したことを医師に告げた上で、可能性のある感染症の検査を受けることをおすすめします。
また、すべての感染症に言えることですが、免疫不全疾患を抱えている場合には、発症すると重篤になる確率が高いことから、細心の注意が必要です。

予防方法としては、必要以上に猫に接触しないことが一番です。また、猫ノミを発生させないために居住空間を清潔に保つ、予防のための薬の投与や塗布をする、万が一ノミが寄生してしまったらすぐにノミを駆除するなどの対策も必要です。
同時に、定期的に爪を切り鋭利なままにしないこと、猫に接触したあとには必ず手を洗うことの徹底なども予防に繋がります。

おわりに

猫を飼っていると多少の傷は当たり前になることも多く、飼い主さんも病気に関してはあまり気にしない傾向にあります。

しかし、普段は大丈夫でも、体調が悪い時に受傷することで、発症してしまうこともあります。

また、受傷した記憶がないのに発症した例としては、いつも猫と一緒に寝ていたという例、猫が顔や体を舐めてくることが多かったという例もあります。知らないうちに小さな傷をつけられていた可能性や、舐められた所に傷があったことで感染した可能性も考えられます。

過敏になる必要はありませんが、こうした発症例もあることを留意した上で、対策を取ることは、猫にとっても人間にとっても快適な暮らしをすることに繋がります。できることから実践していきたいものですね。

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